2008 Fiscal Year Annual Research Report
母子愛着行動の形成機序:幼若期オキシトシン受容体活性化の働き
Project/Area Number |
20790194
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
高柳 友紀 Jichi Medical University, 医学部, 助教 (10418890)
|
Keywords | オキシトシン / オキシトシン受容体 / 愛着行動 / 社会行動 / 情動行動 / 母子 / 母性行動 |
Research Abstract |
幼若期に母親からどういう愛着行動を受けるかによって、子の成熟後の情動性と子が母親になったときに示す母性行動が大きく修飾されることが知られている。しかしこのメカニズムはまだ明らかではない。我々はこれまでに、オキシトシン受容体遺伝子欠損マウスは母性行動が低下していることを明らかにした。一方で幼若期のオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、母親から隔離したときに仔が発する超音波発声がほとんど認められないことを確認した。これらの結果は母仔親和行動において、母仔共にオキシトシン受容体が重要な因子であることを示している。本研究では母仔愛着行動によって仔のオキシトシン受容体が活性化され、仔の将来の行動が規定されているという仮説を証明する事を目的とした。母親と隔離した生後七日目の仔マウスの脳について、神経活動マーカーであるc-Fosの免疫組織化学による解析を行った。母親と隔離した仔マウスにおいて、視索上核のオキシトシン産生ニューロンでc-Fos陽性を示すものが多い傾向が認められた。そこで、幼若期のオキシトシン受容体活性化の影響を検討するため、出生後の5日間、仔マウスにオキシトシン受容体アンタゴニストを投与し、成熟後の行動を解析した。幼若期にオキシトシン受容体アンタゴニストを投与すると成熟後の社会行動が修飾される傾向が見られた。一方で、分娩時に母親の下垂体から血中へ多量に分泌されるオキシトシンの仔への影響を見るため、帝王切開で出生させた仔マウスにオキシトシンを投与して成熟後の行動を解析した。帝王切開後にオキシトシンを投与した群では、自然分娩群に比べて不安行動が増加する傾向が認め照れた。これらのことから、幼若期の母仔愛着行動時と分娩時には仔のオキシトシン受容体が活性化され、それが成熟後の情動行動や社会行動に影響を与えている可能性が示唆された。
|