2009 Fiscal Year Annual Research Report
インシリコスクリーニングによる小胞体ストレス応答制御薬剤の探索と作用機序の解析
Project/Area Number |
20790217
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
齋藤 さかえ Japanese Foundation For Cancer Research, 癌化学療法センターゲノム研究部, 研究員 (20335491)
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Keywords | 小胞体ストレス / マイクロアレイ / 抗がん剤 |
Research Abstract |
小胞体ストレス及びunfolded protein response (UPR)は、多くの疾患との関連が指摘され、近年注目されている研究分野である。固形がんにおいては、腫瘍の内部の微小環境ストレスによるUPRの活性化が、抗がん剤耐性やがんの悪性化の一因となると考えられており、UPRの分子機構の解明は、薬剤耐性を標的とした新たな抗がん剤や治療法の開発につながるものと期待される。 本研究では、発現プロファイルを基にしたスクリーニングによるUPR制御化合物の探索を行い、昨年度までに6種類の化合物をUPR制御薬剤として同定した。これらの化合物は、我々が以前に報告したUPR阻害剤であるversipelostatin (VST)及びビグアナイド化合物(metformin、buformin、phenformin)と類似する発現プロファイルをもつ化合物であり、グルコース飢餓ストレス下で特異的にUPRマーカーである小胞体シャペロンGRP78の誘導を抑制する。これらの新たなUPR制御薬剤について、UPRのシグナル伝達経路等に対する影響を解析した結果、ストレスにより誘導されるPERK及びeIF2αのリン酸化は阻害しないが、翻訳制御因子4E-BP1の脱リン酸化を誘導すること、また、転写因子XBP1の活性化及びATF4の増加を抑制することが明らかになった。さらに、転写調節に対する影響を調べた結果、UPR制御化合物は、グルコース飢餓ストレスにより誘導されるUPR関連遺伝子を含む178個の遺伝子の発現変化を広く阻害することが示された。これらの作用はVST、ビグアナイド及び呼吸鎖阻害剤とも類似しており、共通の機序を介してUPRを阻害している可能性が示唆される。今後、ストレス下のがん細胞で選択的な細胞毒性を示した化合物については、抗がん剤としての応用が期待される。
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Research Products
(3 results)