2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト赤血球代謝応答の大規模数理モデルによる予測と網羅的代謝解析による実証
Project/Area Number |
20790237
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷内江 綾子 Keio University, 医学部, 助教 (10453549)
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Keywords | システム生物学 / シミュレーション / 血液保存 / メタボローム / 代謝解析 |
Research Abstract |
1. 赤血球をMAP保存液によって低温保存する際、赤血球の酸素運搬能、形態維持に必須であるATP、2, 3-ビスホスホグリセリン酸(2, 3-BPG)の低下が起こるが、この機序は夫解明である。そこで、代謝変動の機序を説明するため、MAP保存液で低温保存された赤五球の状態を、代謝シミュレーションモデルを用いて再現した。その結果、既報のATP、2, 3-BPG濃度遷移を再現するモデルが得られた。また、中間代謝物質についてメタボローム解析による時系列での網羅的測定を行い、シミュレーションモデルと一致する結果を得た。このモデルは、新たな低温保存方法の開発た非常に有用である。 2. ヒト赤血球では、低酸素時の血管拡張物質として知られているアデノシンを細胞内に取り込み、代謝によってATPを産生している。ヒト赤血球代謝の低酸素応答の解析としで、低酸素、高酸素状態におけるアデノシン取り込み後の赤血球内代謝物質のメタボローム解析を行い、代謝シミュレーションモデルによる予測結果との比較を行った。その結果、低酸素下での膜タンパクを介した解糖系の活性化が、アデノシンからのATP産生に重要な役割を果たすことを見いだした。 3. 生体内で循環し、酸素分圧や血流の変動を受ける赤血球の代謝応答を予測するためには、細胞の「形状」や細胞内における「分子局在」、「分子による拡散速度の違い」の勘案は不可欠である。そこで、赤血球細胞内の低分子化合物の拡散・膜透過・局在などの「反応の場」と代謝反応を同時に計算可能なシミュレーションを実現するプロトタイプモデルの構築を行った。
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