2008 Fiscal Year Annual Research Report
ポリコーム遺伝子bmi-1による幼若リンパ球の増殖と細胞死のバランス調節機構
Project/Area Number |
20790258
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮崎 正輝 Hiroshima University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (80403632)
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Keywords | T細胞分化 / エピジェネティック制御 / ポリコーム遺伝子 |
Research Abstract |
多様な抗原を認識するT細胞受容体(TCR)のレパトアは、幼弱Tリンパ球の著しい増殖過程によって形成される。本研究は、この増殖期における細胞死抑制のメカニズムとその意義についての検討を目的としたものである。その成果として、ポリコーム遺伝子Bmi1は、ガン抑制遺伝子であるInk4a/Arf遺伝子座のヒストンH3トリメチル化を維持する事で、Arf遺伝子の発現を抑制し、増殖期でのアポトーシスを抑制している事がわかった(Immunity 2008)。さらに、Arf遺伝子発現制御の生理学的意義とその細胞死誘導機構を解明するため、Arf遺伝子欠損マウスと強制発現(Tg)マウスをさらに解析した。結果として、Arf遺伝子は、幼若T細胞のβ選択において非常に強力な抑制作用を持ち、その機構は、p53を活性化しアポトーシス誘導遺伝子であるPuma, Baxを高発現させることであることを、Arf-Tg ; TCR-Tg ; p53-/-マウスを作製・解析することで明らかにした(unpublished)。そしてArf遺伝子の発現意義について、arf-/- ; rag1-/-ダブルノックアウトマウスだけでなく、arf-/- ; scid-/-ダブルノックアウトマウスを作製し、arfがbmi-1-/-だけでなく、正常なT細胞分化・選択においても、check-pointの分子として機能する事を証明した(unpublished)。 このbmi-1→arf→p53→puma/baxという経路は何の為にあるのか? 幼若T細胞は、他の細胞分化と比べても顕著な増殖過程を必要とする。増殖期の細胞の核内のヌクレオソーム構造は、非常に緩くDNA damageを受けやすい。つまり癌化の危険が非常に高いと言える。我々が明らかにしたpathwayは、おそらくこの増殖過程における癌化の監視機構として働いていると考えられる。実際、Arf KOやp53 KOマウスは、非常にlymphomaを起こしやすく、この事を証明していると言える。 現在、さらに詳細な解析を加え、論文を作製している段階である。
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