2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞極性制御因子による糸球体疾患関連蛋白質の機能制御の解析
Project/Area Number |
20790261
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
廣瀬 智威 Yokohama City University, 医学部, 助教 (20381668)
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Keywords | 糸球体疾患 / 腎臓病 / 疾患モデル動物 / 細胞極性 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
日本における慢性腎臓病患者は、現在1330万人以上(成人約8人に1人)とも言われる。更に病態が進行した慢性腎不全による透析患者数は、2007年末現在27万人(全国民約500人に1人)以上に上る。その患者数は毎年約1万人ずつの増加傾向にあり、国民の医療費を圧迫する一因となっている。慢性腎不全の約90%は糸球体疾患が占めることから、糸球体疾患の病態・進展機序解明は急務の課題である。しかしながら、糸球体の構造・生理機能が極めて複雑で特殊であることから、適切な実験系の確立が困難であり、分子レベルの解析は大きく遅れている。 これまでに我々は、独自に樹立したポドサイト特異的aPKCλ欠損マウスが、腎糸球体濾過装置の主役であるスリット膜の機能不全に起因する蛋白尿・糸球体変性を呈して腎不全に陥ることを明らかにし、このマウスが新しいヒトの糸球体疾患モデルマウスとして極めて有用であることを確認した。更にこのaPKC の機能は、スリット膜構成蛋白質であるネフリン・ポドシンとの複合体形成によって発揮されることを示唆する実験結果を得た。 昨年度は分子生物学的解析を更に進めるため、培養上皮細胞に高発現したネフリン分子の細胞膜上での維持効率や、細胞内への取り込み効率を評価できる実験系を構築した。この実験系を利用してaPKCやその関連分子の機能解析を行い、aPKCを中心とする細胞極性制御機構がネフリン分子の細胞膜上での維持に重要である事を明らかにした。この実験系を応用することにより、スリット膜の機能解析を分子レベルで進め得ることが確認できた。 他方で共同研究の発展を図り、糸球体疾患モデル動物やヒト糸球体疾患におけるポドサイトの細胞極性異常を捉えるため、活性化aPKCの免疫組織学的検討も開始した。
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