2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト正常上皮細胞におけるp53-Notch1経路の破綻とがん化
Project/Area Number |
20790265
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
温川 恭至 National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East, ウイルス部, 研究員 (80311372)
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Keywords | 発がん / がん抑制遺伝子 / 転写調節 / ゲノム傷害 / 細胞分化 |
Research Abstract |
本研究は、申請者の見出した新規がん抑制経路であるp53-Notchl経路の活性化に対して、p53の不活化やΔNp63の過剰発現がもたらす影響を解析し、ヒト正常上皮細胞におけるp53-Notchl経路の生理学的意義と上皮がん抑制における機能的役割を明らかにする事を目的としている。p63は重層扁平上皮組織の発生・維持に必須のマスター遺伝子であり、N末の転写活性化ドメインを欠いたΔNp63アイソフォームが特異的に基底細胞で発現している。p53とは対照的にp63遺伝子の変異はがんにおいてほとんど報告されていないが、ΔNp63の高発現が多くの扁平上皮がんにおいて高頻度に観察されている。しかしながら、その発がんにおける意義は明らかにされていない。これまで、ゲノム傷害が引き金となるNotchlの発現誘導時に、NotchlプロモーターからΔNp63が解離しp53と置き換わることを見出している。またp53-Notchl経路の活性化によって角化細胞の分化が促進されること、並びに分化に伴いΔNp63蛋白レベルが下方調節されることを明らかにしている。今回、RNA干渉法を用いてΔNp63をノックダウンしたところNotchlの発現充進と分化誘導が観察された。このNotchlの発現上昇は転写レベルで起きており、Notchlプロモーターの活性化を伴うことを明らかにした。さらに、Notchlの発現抑制によってΔNp63ノックダウンによる表現型が有意にレスキューされたことから、ΔNp63発現低下による分化誘導は少なくとも部分的にはNotchlの機能を介したものであることが示唆された。対して、ΔNp63を過剰発現させたところNotchlの発現低下と分化抵抗性が認められた。これらの結果から、ΔNp63がNotchl遺伝子に対してリプレッサーとして機能し、細胞分化を負に制御することが明らかとなった。
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Research Products
(19 results)