2009 Fiscal Year Annual Research Report
肺腺癌の多段階発癌におけるLKB-1,K-ras,EGFR遺伝子変異の解析
Project/Area Number |
20790274
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大出 貴士 Chiba University, 大学院・医学研究院, 助教 (00422246)
|
Keywords | 病理学 / 肺癌 / 腺癌 / 発癌 |
Research Abstract |
肺腺癌の発生においては、前癌病変と考えられる異型腺腫様過形成から非浸潤癌(上皮内癌)である細気管支肺胞上皮癌を経て浸潤癌に至るとする多段階発癌機序が想定されている。この過程において付加的遺伝子異常を生じ、浸潤癌の性質を獲得すると考えられる。肺癌においては、CD133がcancer stem cellのマーカーである可能性が最近報告された。組織標本においてcancer stem cellを同定できれば、多彩な組織像を呈する肺腺癌混合型においてcancer stem cellの局在の特定が可能となり、発癌において付加的に生じると考えられる遺伝子異常と組織像の対比を行い得ることから有用と考えられる。そこで、異型腺腫様過形成1例,細気管支肺胞上皮癌6例(粘液産生型4例および粘液非産生型2例),および肺腺癌混合型7例を対象に、外科切除例のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックから4μm薄切切片を作製し、抗CD133抗体を用いて通常の方法で免疫染色を行った。肺腺癌全例および異型腺腫様過形成1例において一部の癌細胞の細胞質および核に淡い陽性像が見られたものの、細胞膜には明らかな陽性像は見られなかった。同様の陽性像は非癌部の肺胞上皮細胞においても認められることから、非特異的反応の可能性も考えられた。また、一部の肺腺癌の発生にALK融合遺伝子が関与することが最近報告されたが、自験例において、気管支内腔にポリープ状に発育するとともに末梢肺組織中に印環細胞癌の形態を示して浸潤する特異な病理組織像を呈する肺腺癌の1例において、ALK免疫染色(iAEP法)が陽性となることを見出した。このような病理組織像を示すALK陽性肺癌の報告はこれまでになく、腫瘍発生学的に興味深い結果が得られた。
|