2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝移植後のグラフト不全とグラフトの老化、寿命との関連
Project/Area Number |
20790282
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮川 文 京都大学, 医学研究科, 講師 (90432385)
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Keywords | 移植病理 / 肝グラフト / 老化 |
Research Abstract |
本研究では生体肝移植後10年におけるグラフトの老化に関してテロメア特異的fluorescence in situ hybridization (FISH)法、XY染色体によるFISH法を用いてグラフトの肝細胞に焦点を当て、経時的なテロメア短縮の程度、XY染色体にて異常核型を検討した。肝機能と組織学的にも異常のない安定群と慢性拒絶群との2群(各10例)で検討した。移植時のドナー肝(正常肝)を起点に、移植後1年以内の早期生検、移植後5年、10年の生検も含め、経時的にグラフトの肝細胞に焦点を当て、肝細胞核のテロメアシグナルを定量化した。まず対照として約40例の正常肝(ドナー肝)の加齢によるテロメア長の短縮率を算出した。2群の経時的な解析では両群ともに肝移植後早期にドナー年齢に関係なく、急激なテロメアシグナルの短縮がみられた。移植時の虚血、再潅流障害が考えられた。両群とも10年後のテロメアシグナルは対照例の加齢によるテロメア長の短縮率よりも著明に低下し、慢性拒絶群で低下率がより高かった。さらにXY FISHでは、慢性拒絶群では安定群よりも有意に老化を示唆する肝細胞核の異数体を示す染色体が増加していた。移植後は、グラフトの老化に加え、周術期や細胞浸潤による酸化ストレスによると考えられる急激なテロメア短縮が認められ、長期のグラフトの状態を決定する可能性がある。今後、さらに多数例で検討し、周術期の抗老化療法にてグラフトの老化を防ぎ、グラフトの長期維持を目指したい。
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