2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20790304
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
出口 敦子 Kyoto University, 医学研究科, 研究員 (10422932)
|
Keywords | 癌 / シグナル伝達 / 肝細胞癌 / LKB1 / キナーゼ |
Research Abstract |
細胞運動性におけるLKB1の役割についての解析を行った結果、細胞運動性、細胞増殖に重要な役割を果たすことが知られているPAK1シグナル伝達経路をLKB1が抑制していることを示し、その分子機序の解析を行った。 まず我々は、ヒト大腸癌HCT116細胞を用いて、LKB1をノックダウンすると細胞運動性が上昇し、PAK1活性が亢進していることを見出した。次に、運動性の上昇がPAK1活性の上昇によるものであるのかを調べるため、不活性型PAK1をLKB1ノックダウン細胞に発現すると、細胞運動性の上昇は解除された。一方、LKB1欠損MEF細胞に外来LKB1を発現するとPAK1の活性を顕著に阻害し、同時に運動性の抑制も認められた。このLKB1による運動性の抑制は活性型PAK1の発現により解除された。これらの結果により、LKB1がPAK1依存の細胞運動性を抑制することが示唆された。また、LKB1がPAK1の活性を抑制するためにはLKB1の酵素活性が必要であり、LKB1はin vitroでPAK1のThr109残基をリン酸化することを見出した。さらに、このリン酸化を模したPAK1-T109E変異体は野生型PAK1と比較して顕著に活性が低く、一方、リン酸化耐性のPAK1-T109A変異体はLKB1による抑制を受けなかったことから、LKB1によるPAK1を抑制するために、Thr109残基のリン酸化が不可欠であることが示唆された。さらに、Lkb1(+/-)マウス肝癌では正常肝臓部と比較して、PAK1が活性化していることがわかった。本研究により、我々は、がん抑制遺伝子LKB1の新規標的因子としてPAK1を同定し、また、LKB1がPAK1シグナル伝達経路を抑制し、細胞増殖や運動性を制御していることを示唆した。
|