2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規インスリンシグナル分子WDR6を介する細胞内情報伝達経路の同定とその機能解析
Project/Area Number |
20790306
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
千葉 卓哉 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (40336152)
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Keywords | 老化 / インスリンシグナル / カロリー制限 / 視床下部 / 代謝 / 寿命 / 神経内分泌 |
Research Abstract |
インスリン/インスリン様成長因子-I(insulin/IGF-I)シグナルは、老化および老化関連疾患の発症や発ガンに重要な役割を担っている。我々は、新規のinsulin/IGF-Iシグナル関連分子と示唆される、WD-repeat protein 6(WDR6)を同定し、この分子の機能解析を通じて、老化関連疾患に対する治療法の開発や、個体および細胞の老化機構の解明を目指した研究を行った。WDR6は脱リン酸化を制御するタンパク質、ホスファターゼと相同性があり、さらにタンパク質-タンパク質の相互作用に重要なWD-repeatモチーフをもっているが、その機能は未知であった。免疫沈降法によりWDR6がIRS-4(インスリン受容体基質-4)と物理的に相互作用することを明らかにした。また、視床下部においてWDR6の発現が高く、このことはIRS-4の発現パターンと一致していた。さらに長寿命ラット、すなわち成長ホルモンアンチセンストランスジェニックラット、および食餌カロリーを制限したラットの視床下部弓状核において、WDR6の発現が低下していることが示唆された。一方で視床下部由来の培養細胞にinsulinまたはIGF-Iを添加するとWDR6の発現が上昇した。これらの結果から、WDR6がinsulin/IGF-Iシグナルの制御因子であることが示唆された。さらなるWDR6の機能解明により、神経変性疾患やガン、生活習慣病等に対する新たな治療戦略を創出するとともに、高等生物の老化機構の解明という普遍的な科学的問題に対する重要な発見をもたらすことが期待できる。現在、cre-loxP系システムをもちいた脳特異的WDR6ノックアウトマウスの作製を行っている。今後は、遺伝子改変動物等をもちいてWDR6の分子機能についてさらに詳しく明らかにして行く。
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