2009 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症モデル動物を用いた疾患危険因子の同定とその治療薬の開発
Project/Area Number |
20790309
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中川西 修 Tohoku Pharmaceutical University, 薬学部, 助教 (50296018)
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Keywords | 神経発達障害 / 統合失調症モデル動物 / 前頭前皮質 / ニューレグリン / erbB4受容体 / グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
昨年度は、神経発達障害仮説に基づいた統合失調症の動物モデルである幼若期腹側海馬(neonatal ventral hippocampal; NVH)障害ラットを作製し、その動物における統合失調症患者のリスク遺伝子として注目されているneuregulin-1(NRG-1)及びその受容体の一つであるerbB4受容体の機能を免疫組織化学的染色法及びウエスタンブロット法により解析したところ、思春期後のNVH障害ラットの前頭前皮質においてNRG-1レベルの低下及びerbB4受容体の機能低下が観察された。従って、本年度はerbB4受容体機能が低下していた為、NRG-1を前頭前皮質へ微量注入し生後56日目(思春期後)のNVH障害ラットが示すprepulse inhibition (PPI)障害(=認知障害)が改善するか否か検討したところ、NRG-1(500 or 1000ng/0.5μl)の投与によりNVH障害ラットが示すPPI障害を有意に改善させた。さらに、このNRG-1/erbB4受容体シグナリングの変化は、統合失調症の病因でもあるグルタミン酸受容体機能を調節することが報告されていることから、前頭前皮質のグルタミン酸受容体機能(特にグルタミン酸受容体のシグナル伝達に重要な役割を果たしているカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼ(CaMK)IIのリン酸化)をウエスタンブロット法により解析したところリン酸化CaMK IIの減少が観察された。従って、NVH障害ラットのPPI障害にはerbB4シグナリングの低下さらにはグルタミン酸受容体のシグナリング低下が関与していることが示唆され、NRG-1/erbB4受容体シグナリングの調節因子が統合失調症の新たな治療ターゲットとなる可能性を示唆した。
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