2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規治療薬開発に向けたエキノコックス増殖関連遺伝子群のプロファイリングと機能解析
Project/Area Number |
20790321
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松本 淳 Nihon University, 生物資源科学部, 講師 (70296169)
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Keywords | 寄生虫学 / 発生・分化 / 獣医学 |
Research Abstract |
エキノコックス症は、世界的規模で深刻な被害をもたらしている人獣共通寄生虫症である。幼虫期のエキノコックスが人体の組織内で増殖することにより致死的な病害をもたらす。このため、本症に対するワクチンや治療薬を開発するためには、宿主体内における幼虫期虫体の定着と増殖に関わる因子を解明する必要がある。本年度は、4種類の近交系マウス(DBA/2、AKR/N、C57BL/6、C57BL/10)に対して、エキノコックス虫卵の経口投与により人工感染させ、宿主体内における虫体の定着と増殖を比較した。その結果、DBA/2体内では、虫体は高い定着率と増殖活性を示したのに対して、C57BL/6体内では感染後の定着率が低いだけでなく、その後の発育も不完全であった。他の2系統は、DBA/2およびC57BL/6の中間の結果を示した。そこで、DBA/2およびC57BL/6の交配により作製したF1と、このF1とDBA/2の戻し交配により作製したバッククロスマウスに対して感染実験を実施し、宿主体内における虫体の定着・増殖を指標とするQTL解析により、虫体の定着と増殖に関わる責任遺伝子群の同定を進めている。一方、虫体側の増殖因子の解析を遂行するために、エキノコックス虫体から作製した全長cDNAライブラリーの情報をもとに、DNAマイクロアレイの作製を進めている。今年度は解析に耐えるアレイの完成に至らなかったため、今後もDNAマイクロアレイ作製の作業を継続する。また、虫体の定着・増殖に関わる因子としてテトラスパニンに着目して解析を実施している。これまでに、テトラスパニン7種の組換えタンパクを作製し、そのワクチン効果を評価した。その結果、一部のテトラスパニンは、虫体の定着率を非免疫群の15%以下に抑える高い感染防御効果を示した。この結果から、一部のテトラスパニン分子種が、宿主体内におけるエキノコックスの定着・増殖において重要な機能を担っていることが示唆された。
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