2010 Fiscal Year Annual Research Report
家禽における腸管内の細菌および原生動物の共生関係と病原性細菌の伝播機構の研究
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20790346
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
関塚 剛史 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター第三室, 研究員 (40462775)
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Keywords | 細菌叢 / 原生動物 / 共生 / 分子生物学 / 原虫 |
Research Abstract |
本研究は、動物腸管内における細菌および原生動物の共存関係の解析を目的とした。本年度では、昨年度に考案した糞便中の原生動物回収法を用いて、原生動物内に内在する細菌の網羅的検出を行った。また、糞便中の原虫の培養を試みた。今回糞便中から回収された原虫は、主にBalantidium属に近縁のものであった。糞便中の原虫の培養を行ったところ、トリコモナス類と思われる原虫がロビンソン培地中で2週間生存していたが、増殖するまでには至らなかった。Balantidium属原虫の殆どはシスト形成をしていたため、培養が確認されなかった。放牧牛の糞便全体の細菌叢と糞便中の原生動物内に内在する細菌の16S rRNA遺伝子のV3可変領域を増幅後、次世代シークエンサーにて網羅的に解読し、両者間の比較を行った。糞便全体では、BacteroidetesおよびFirmicutes等の一般的に糞便中で優位に存在する細菌が大部分を占めていたが、原虫内に内在する事が予測された細菌は、糞便中に存在するものとは大きく異なり、糞便中で主要な割合を示す細菌は殆ど検出されなかった。また、糞便中では検出限界以下であった細菌が、原虫内には存在する事が示唆された。原虫内には、偏性嫌気性細菌、微好気性細菌および通性好気性細菌(Chryseobacterium, Enterococcus, Leuconostoc, Lactococcus, Streptococcus,Clostridium, Anaerovorax, Mogibacterium, Blautia, Butyrivibrio, Turicibacter, Acidrovorax, Comamonas, Microvigula, Arcobacter, Citrobacter, AcinetobacterおよびEnhydrobacter)は検出されたが、偏性好気性細菌は全く検出されなかったことから、原虫内の酸素分圧は環境中よりも低い事が示唆された。また、今回検出された細菌が、原虫内で生存しているかを確認する為、生菌のみを染色出来る蛍光物質にて染色をした所、シスト形成した原虫内の空胞内に生菌が存在する事が確認された。以上の結果から、Balantidium属原虫内には、糞便の細菌叢もしくはそれ以外の環境から生きた細菌が選択的に取り込まれ、シスト形成した状態でも生存した状態で細菌が内在する事が明らかとなった。
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