2008 Fiscal Year Annual Research Report
サルエイズウイルスのヒトへの感染伝播を規定する宿主制御因子の網羅的解析
Project/Area Number |
20790350
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武内 寛明 The University of Tokyo, 医科学研究所, 特任助教 (20451867)
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Keywords | ウイルス / エイズ / 感染症 / 異種間感染 / 人畜共通感染症 / 細胞内免疫 |
Research Abstract |
本研究は、サルエイズウイルス(SIV)が宿主域を乗り越えて、ヒトに感染伝播してきた機構を明らかにすることで新興感染症に対するヒト宿主防御機構に対する理解を深めることが目的である。具体的には、SIV感染におけるヒト細胞性抑制因子を同定し、この因子が持つ機能を抑制して増殖伝播するウイルス機構を明らかにすることである。 H20年度は、以前の研究成果により得られた細胞内SIV抑制因子である、CyclophilinA (CypA)の更なる機能解析を行うために、Cyclophilin familyの酵素活性阻害剤であるCyclosporine A (CsA)を用いて、サルおよびヒトへの野生型SIV感染増殖に対する影響を解析した結果、サル細胞では、CsA存在下において増殖抑制側に作用し、ヒト細胞ではその粒子感染性および増殖効率をさらに上昇させることから、サルCypAはSIV増殖に必須であり、ヒトCypAは野生型SIVの増殖抑制因子として更に機能していることが示唆された。ところが、CypA遺伝子をノックダウンしたヒト細胞を用いてSIV感染実験を行ったところ、粒子感染性が上昇する結果が得られたが、CsA処理によって更に上昇することが認められた。更には、ヒトCypAとサルCypAのアミノ酸配列差異が認められなかったことから、CypAは、単独でSIV感染に対する抑制機能を発揮しているのではなく、CsAの影響を受ける他の宿主因子との相互作用によって発揮されていると考えられる。また、HIVを骨格としたキメラウイルスを用いた感染実験により、CypAと相互作用するCapsid領域(CypA binding loop)をSIV由来の配列に置き換えただけでは、野生型SIVのヒトへの感染に対するCsAの効果が認められなかったことからも、CsAの影響を受けるCypA以外のヒト細胞内因子の存在が示唆されており、この因子(群)が、種間感染の差異を規定するものである可能性があると考えられる。
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Research Products
(3 results)