2009 Fiscal Year Annual Research Report
サルエイズウイルスのヒトへの感染伝播を規定する宿主制御因子の網羅的解析
Project/Area Number |
20790350
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武内 寛明 The University of Tokyo, 医科学研究所, 特任助教 (20451867)
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Keywords | ウイルス / エイズ / 感染症 / 異種間感染 / 人畜共通感染症 / 細胞内免疫 |
Research Abstract |
本研究は、サルエイズウイルス(SIV)が宿主域を乗り越えて、ヒトに感染伝播してきた機構を明らかにすることで新興感染症に対するヒト宿主防御機構に対する理解を深めることが目的である。具体的には、SIV感染におけるヒト細胞性抑制因子を同定し、この因子が持つ機能を抑制して増殖伝播するウイルス機構を明らかにすることである。 H21年度は、昨年度に引き続き、SIV感染に対するCyclosporine A(CsA)の効果を詳細に検討した。昨年度は、CsA感受性宿主因子であるCyclophilin A(CypA)のSIV感染に及ぼす影響を検討したが、CsAの効果を説明するまでには至らなかった。今年度は、CsA感受性宿主因子群の一つであるCyclophilin B(CypB)のSIV感染に及ぼす影響を検討した。具体的には、CypB遺伝子をノックダウンしたヒトT細胞を作製し、それを用いてSIV感染実験を行ったところ、SIV増殖促進が認められた。次にCypBの作用機序を詳細に検討したところ、CypBノックダウン細胞内におけるウイルスDNA合成効率が上昇することが明らかになった。これらの結果は、CypB分子はSIV感染抑制ヒト細胞内因子である可能性を示唆している。ところが、HIV感染に対してCypBは殆ど影響を及ぼさないことから、CypBのウイルス感染抑制効果は、SIV特異的であることが考えられる。また、サルT細胞へのSIV感染に対するCypBの影響を解析するために、サルT細胞内にCypB分子を過剰発現させたところ、ウイルスDNA合成効率の上昇が認められたことから、サルCypBはSIV感染必須細胞内因子である可能性が示唆された。しかしながら、ヒトCypBとサルCypBとのアミノ酸配列差異は見受けられなかったことから、CypBを含む複合体の構成因子の差異が、種間感染を規定する因子である可能性が考えられる。
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