2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヘルペスウイルス感染による宿主選択的スプライシング制御と免疫回避機構
Project/Area Number |
20790353
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野島 孝之 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・疾患生命科学研究部, 特任助教 (80431956)
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス / 選択的スプライシング / 前骨髄球性白血病(PML)遺伝子 / ミニ遺伝子 / Pre-mRNA / スプライシングアイソフォーム / ICP27 |
Research Abstract |
単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2 ; Herpes Simplex Virus type-2は世界中に広く伝播しているDNAウイルスで、性器ヘルペスを主症状とする。HSV-2のウイルスゲノム複製は宿主細胞核内で行われるが、HSV-2ゲノムはPML(promyelocytic leukemia)タンパク質を主成分とする核内構造体PMLボディに取り込まれる。PML遺伝子は抗ウイルス作用を持つ遺伝子TRIM(tripartite motif)ファミリーの一員であり、ウイルス増殖抑制作用を有する。一方、PMLボディはHSV-2複製の場とも報告されており、矛盾が生じている。PMLボディがウイルス複製という事象に何らかの重要な役割を果たしているのは明らかであり、ウイルス感染によってPMLボディの性状が変化するという報告があることから、申請者はPMLタンパク質の性質がHSV-2感染によって変わるのではないかと考えた。本研究では、HSV-2がどのようにHSV-2自身のゲノム複製に最適な環境を作り出しているのかを目的として調べている。申請者は、PML遺伝子から合成されるpre-mRNAが選択的スプライシングを受け、複数のスプライシングバリアントが産生されることに注目し、HSV-2感染下におけるPMLアイソフォームの機能を調べた。その結果、PML-II型アイソフォーム(PML-II)がHSV-2増殖促進に関わることが明らかになった。興味深いことに、HSV-2感染細胞でのPMLアイソフォームの発現を調べた結果、非感染細胞で主に発現していたPML-IIの発現は抑制され、ほとんど発現していなかったPML-Vの発現が促進していた。PML-IIからPML-Vへの切換えは選択的スプライシングによる制御である。申請者は、このスプライシング制御因子を明らかにするために、蛍光タンパク質のコード領域を連結させたPMLミニ遺伝子を作成した。このPMLミニ遺伝子は、非感染細胞では赤色蛍光タンパク質RFPを発現させるが、感染細胞ではスプライシング変化によりストップコドンが現れるためにRFPの発現が抑制される。そのため、RFPの発現を指標とすることにより、生きた細胞でスプライシングパターンが即座に判別できる。このミニ遺伝子とHSV-2がコードするウイルス遺伝子を共発現させた結果、PML選択的スプライシングの制御因子としてICP27(Infected cell protein)を同定することに成功した。現在、ICP27タンパク質のスプライシング制御機構を、ミニ遺伝子の改変やSELEXなどのRNA結合実験などにより、詳細に解析しているところである。 ウイルスタンパク質が宿主細胞の選択的スプライシングを制御し、ウイルスゲノム複製に何らかの影響を与えている報告は今まで無いため、生物学的に重要な発見に近づいていると期待している。申請者は蛍光タンパク質を用いたスクリーニング系を用いてPML選択的スプライシングを制御する低分子化合物を探索する予定である。
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Research Products
(2 results)