2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘルペスウイルス感染による宿主選択的スプライシング制御と免疫回避機構
Project/Area Number |
20790353
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野島 孝之 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・疾患生命科学研究部, 特任助教 (80431956)
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス / 選択的スプライシング / 前骨髄球性白血病(PML)遺伝子 / ICP27 / Pre-mRNA / スプライシングアイソフォーム / ミニ遺伝子 |
Research Abstract |
単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2 ; Herpes Simplex Virus type-2)は世界中に広く伝播しているDNAウイルスで、性器ヘルペスを主症状とする。HSV-2のウイルスゲノム複製は宿主細胞核内で行われるが、HSV-2ゲノムはPML(promyelocytic leukemia)タンパク質を主成分とする核内構造体PMLボディに取り込まれる。PML遺伝子は抗ウイルス作用を持つ遺伝子群TRIM(tripartite motif)ファミリーの一員であり、ウイルス増殖抑制作用を有する。しかしながら、PMLボディはHSV-2複製の場とも報告されており、矛盾が生じている。本研究では、HSV-2がどのようにHSV-2自身のゲノム複製に最適な環境を作り出しているのかを調べた。申請者は、PML遺伝子から合成されるpre-mRNAが選択的スプライシングを受け、複数のスプライシングバリアントが産生されることに注目し、HSV-2感染下におけるPMLアイソフォームの機能を調べた。その結果、PML-II型アイソフォーム(PML-II)がHSV-2増殖促進に関わることが明らかになった。興味深いことに、HSV-2感染細胞でのPMLアイソフォームの発現を調べた結果、PML-IIの発現は抑制され、PML-Vの発現が促進していた。PML-IIからPML-Vへの切換えは選択的スプライシングによる制御である。申請者は、このスプライシング制御因子を明らかにするために、蛍光タンパク質のコード領域を連結させたPMLミニ遺伝子を作成し、制御因子のスクリーニングを行った。その結果、制御因子としてウイルスタンパク質であるICP27(infected cell protein 27)を同定することができ、ウイルスタンパク質のスプライシング制御機構を解き明かすことができた。以上の結果から、宿主細胞はICP27を認識することにより、効率的なHSV-2複製に必要なPML-II発現をスプライシングによって抑制することが示唆された。 本研究の成果は、ウイルス増殖に関わる遺伝子の一部をミニ遺伝子化することで、ウイルス感染下でのスプライシングパターンの可視化が可能になったことを示している。また、このミニ遺伝子は遺伝子発現の分子メカニズム解明だけでなく、抗ウイルス剤のスクリーニングや診断にも応用可能であると期待している。
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Research Products
(6 results)