2008 Fiscal Year Annual Research Report
RSウイルス感染による自然免疫応答攪乱機序とその修復化合物の探索
Project/Area Number |
20790356
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
岡林 環樹 Sapporo Medical University, 医学部, 助教 (10359995)
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Keywords | RSウイルス / ホスホマシン / RANTES / NF-κB / サイトカイン |
Research Abstract |
【緒論】RSウイルス(RSV)は呼吸器上皮細胞に感染し、小児において下気道炎などの呼吸器疾患を起こす。RSV感染による鼻咽頭液中の炎症性サイトカインIL-6、ケモカインIL-8、RANTESが細胞を障害する。このようなサイトカインバランスの崩壊からアレルギー、喘息との関連性も指摘されている。各種抗菌薬の新たな展開として、免疫調節効果が研究されている。抗菌薬ホスホマイシン(FOM)はリンパ球や単球に作用し、サイトカイン産生を調節することが報告されている。そこでRSVによる呼吸器上皮細胞からのケモカイン産生をFOMが抑制することを明らかにしたので報告する。 【材料と方法】肺胞上皮細胞A549に、RSV(Long株、A2株)をMOI 1で感染させ、FOMを0-1000μg/mlの濃度で処理した。処理細胞からRT-PCRによりサイトカインmRNAの発現、培養上清からサイトカイン/ケモカイン産生量をELISAにより求めた。RANTESプロモーター、NF-κBルシフェラーゼ遺伝子解析、固相化NF-κKB結合領域核酸に対する核抽出物の結合によりNF-κBの活性を調べた。 【結果と考察】FOMをウイルス吸着前、吸着中、吸着後、高濃度で処理しても、細胞活性、ウイルス複製に影響は無かった。RANTES、IL-8の産生はFOMにより抑制されたが、IL-6は抑制されなかった。FOMはウイルス感染後の処理だけでもRANTES産生を有意に抑制した。RSV感染はRANTESプロモーターを活性したが、その活性はNF-κB結合領域変異体で抑制された。また、FOM処理がRSV感染によるNF-κBの転写活性及び結合を抑制した。これらのことより、RSVは感染呼吸器上皮細胞においてNF-κB依存的にRANTESを産生し、FOMはNF-κBの活性を抑制することにより、RANTESの産生を抑制すると考えられる。
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