2009 Fiscal Year Annual Research Report
RSウイルス感染による自然免疫応答攪乱機序とその修復化合物の探索
Project/Area Number |
20790356
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
岡林 環樹 Sapporo Medical University, 医学部, 講師 (10359995)
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Keywords | RSウイルス / ホスホマシン / RANTES / NF-κB |
Research Abstract |
【目的と意義】RSウイルス(RSV)は小児において下気道炎などの呼吸器疾患を起こす。RSV感染によりIL-8、RANTES産生が誘導されるため、アレルギー、喘息との関連性が指摘されている。またRSVは気道における肺炎球菌の受容体としても働く血小板活性化因子(PAF)の受容体を発現上昇し、二次感染が呼吸器症状の憎悪をもたらす。本研究では、抗菌薬ホスホマイシン(FOM)のRSV感染細胞からのケモカイン産生、PAF受容体発現上昇に対する影響について検討した。 【材料と方法】RSV感染細胞に、FOMを0-1000μg/mlを処理し、サイトカインmRNAの発現、培養中のサイトカイン量を測定した。RANTESプロモーター、NF-κBルシフェラーゼ遺伝子解析、固相化NF-κB結合領域核酸に対する核抽出物の結合によりNF-κBの活性を調べた。PAF受容体の発現はRT-PCR、フローサイトメトリーにより調べた。FITC標識した肺炎球菌菌体の細胞への接着をフローサイトメトリーで検討した。 【結果】RSV感染はRANTESプロモーターを活性したが、FOM処理がRSV感染によるNF-κBの転写活性及び結合を抑制した。PAF受容体はRSV感染により誘導され、FOM共存下でこの発現上昇が有意に抑制された。RSV感染細胞では肺炎球菌接着量は有意な増加を認められたが、FOM共存下での感染では肺炎球菌の接着量は減少していた。 【考察】RSVは感染細胞においてNF-κB依存的にRANTESを産生する。FOMはNF-κB活性を抑制することにより、RANTES産生を抑制すると考えられる。またFOMにRSVによるPAF受容体の発現上昇を抑制する効果を見い出した。FOMが抗菌活性以外に、ウイルス感染における炎症症状の緩和や細菌の二次感染の抑制をもたらす可能性が示唆された。
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