2009 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルス結合性アシアロ糖脂質の感染機構における機能グライコミクス
Project/Area Number |
20790357
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
高橋 忠伸 University of Shizuoka, 薬学部, 助教 (20405145)
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Keywords | インフルエンザウイルス / スルファチド / ヘマグルチニン / ウイルス増殖 / ヌクレオプロテイン / ウイルス産生 / パラインフルエンザウイルス |
Research Abstract |
インフルエンザウイルスはその表面に存在するヘマグルチニン糖タンパク質(HA)を介して、宿主細胞表面上の受容体であるシアル酸に結合して感染を開始する。一方、インフルエンザウイルスはシアル酸を含有していない硫酸化糖脂質スルファチドへも特異的に結合することを報告している。本研究はウイルス感染におけるスルファチドの機能解明を目的とする。前年度の研究で、スルファチドはウイルス感染の受容体として機能しないこと、さらにウイルスの宿主や亜型に依存せず、感染細胞からの子孫ウイルス粒子の産生を強力に促進させることを明らかにした。その機構は、新たに合成されたHAが細胞表面に輸送されてスルファチドと結合することが刺激になり、核内に局在していたウイルスの核タンパク質(NP)の積極的な細胞質への輸送が開始され、子孫ウイルス粒子の形成を促進するものであった。本年度は、スルファチドと結合するインフルエンザウイルスのタンパク質の明確な同定と、パラインフルエンザウイルス感染におけるスルファチドの機能解明を実施した。トリインフルエンザウイルスのH5型HAをバキュロウイルス-タンパク質発現システムにより大量発現および精製を行った。このHAは抗原性が維持されており、シアル酸結合性およびスルファチド結合性が確認された。さらに、特異的H5型HA単クローン抗体を処理したHAはスルファチドとの結合が阻害された。バキュロウイルスシステムで産生したHAは、HA-スルファチド結合阻害剤のスクリーニングに応用できることが示され、今後、新規抗ウイルス薬の開発に役立つものと期待される。パラインフルエンザウイルス(ヒト1型、3型、ニューキャッスル病ウイルスおよびセンダイウイルス)のスルファチド結合性を明らかにした。スルファチドはこれらのウイルスの受容体として機能せず、融合過程に関与することが示唆された。
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