2009 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍関連マクロファージを標的とした抗葉酸受容体βイムノトキシンの開発と前臨床試験
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20790377
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
永井 拓 Kagoshima University, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (90363647)
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Keywords | マクロファージ / がん / 葉酸受容体β / 炎症 / 抗体医薬 / 低分子高機能型抗体 / イムノトキシン |
Research Abstract |
【目的】がん増殖を促進するマクロフアージ(腫瘍関連マクロファージ)の葉酸受容体βの発現をがん組織にて検討し、このマクロファージを標的とした抗葉酸受容体β-(FRβ)抗体ベースの低分子高機能型抗体(遺伝子改変型緑膿菌毒素PE38ベースのイムノトキシン)を作製すると共に、動物モデルにてその効果を検討した。 【結果】(1) ヒトがん組織におけるFRβを発現する腫瘍関連マクロファージの局在を免疫組織化学染色にて行ったところ、FRβ発現マクロファージは、脳腫瘍、肺がん、膵臓がんの腫瘍と間質の境界に集簇を形成して局在した。さらに、このマクロファージの高局在性は、がんの悪性度と相関を示した(正常組織では低局在もしくは存在しない)。(2) 次に、FRβ陽性マクロファージの局在性をラットC6グリオーマ・ヌードマウス皮下移植モデルおよびマウス肺がんモデルにて検討したところ、ヒトがん組織と同様、集簇を形成してがん間質や血管新生領域に局在する事が確認された。(3) FRβ陽性マクロファージの選択的除去を目的とした低分子高機能型抗体(イムノトキシン)を作製し、(2) のモデルに投与したところ、腫瘍血管新生の抑制を伴ったがん増殖の抑制が確認された。(4) イムノトキシンはFRβ陽性マクロファージが分泌するVEGFやNO産生を抑制した。 【結論】以上のことから、FRβを発現する腫瘍関連マクロファージは、がんの増殖に促進的に関与し、その選択的除去が治療面に有効なことが示唆された。しかしながら、本研究で用いたイムノトキシンは緑膿菌毒素がベースであるため、連続投与による免疫原性(抗イムノトキシン抗体産生による治療効果の半減など)が高いことが新たな問題点として残された。現在、連続投与を前提とした低免疫原性を示す新規低分子高機能型抗体を開発中である。
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Research Products
(5 results)