Research Abstract |
前年度に引き続き,抗酸化作用を加味したメタボリソクシンドローム(Mets)治療に対する新たな治療戦略を提案するために,Mets改善薬として臨床使用されている降圧薬のプレイオトロピックエフェクトとしての抗酸化作用の解析を行った。降圧薬として汎用されているオルメサルタンにおいて試験管レベルでの抗酸化作用が認められたため,5/6腎臓摘出腎不全モデルラットに対しオルメサルタンを10mg/kgにて8週間経口投与を行った。その結果,酸化アルブミンを指標とした酸化ストレスマーカーは4週間後に有意に低下し,その効果は8週間後まで持続していた。また,血液中の抗酸化力に関しても,銅の還元能を指標としたPAO活性の有意な上昇が認められた。これらのことから,オルメサルタンの抗酸化作用がin vivoにおいても確認された。さらに,この効果は血圧低下作用とは独立していること,またオルメサルタンの抗酸化効果は腎保護効果に関連することを見出した。(Kadowaki D. et al., Biol Pharm Bull. 2009)。一方,Metsは心血管疾患(CVD)および慢性腎臓病(CKD)のリスクファクターであり,さらに近年,心腎連関というCKDとCVDは相互にリスクファクターとなることが明らかにされつつある。このCVDとCKDの発症のトリガーとなる障害は,血管内皮の障害であることが示唆されている。そこで,オルメサルタンの抗酸化メカニズムを詳細に検討するために,ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて検討を行った。HHVECに傷害を惹起する刺激剤として,アンジオテンシンII, LPS,および尿毒症物質としてISおよびAOPPを用いた。これらの刺激物添加により,HUVECにおける活性酸素種(ROS)の産生が亢進するが,オルメサルタン添加によりROS産生抑制作用が観察された(投稿準備中)。これらの結果は,オルメサルタンが単なる降圧薬でないことを示唆しており,高血圧でない場合にも,Metsの予備軍の段階からの早期投与が有効である可能性を示す有益な知見である。
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