Research Abstract |
メタボリックシンドローム(Mets)において,酸化ストレスはその病態の発症及び進展に深く関与している。さらにMetsは心疾患や腎疾患のリスクファクターでもあることが示されている。そのため,新規抗酸化剤の開発研究が活発になされているが,抗酸化剤の適応を的確に有する薬剤はほとんどないのが現状である。加えて,新規抗酸化剤の処方追加は医療経済的に負担が大きいため,既存の薬剤の中から抗酸化作用を有する薬物を活用する,いわゆる育薬が実践的な対策として期待されている。そこで,現在,メタボリックシンドローム改善薬として臨床使用されている降圧薬のプレイオトロピックエフェクトとしての抗酸化作用を解析し,抗酸化作用を加味した新たな治療戦略を提案することを目的とし,検討を重ねてきた。 これまでに,アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)であるオルメサルタン(降圧薬)において,抗酸化活性がin vitroの系において認められている。そのため,今年度は細胞実験により詳細な検討を行った。Metsの特徴の1つである腎における酸化ストレス亢進をモデルとし,血管内皮細胞に尿毒症物質を添加した際の抗酸化作用を評価したところ,代表的な尿毒症物質であるインドキシル硫酸(IS)により顕著な活性酸素種(ROS)の増大が認められたが,オルメサルタンによりその上昇が抑制された。さらに興味深いことに,降圧薬の1つであるアゼルニジピン(カルシウム受容体拮抗薬)との併用により酸化ストレスのさらなる抑制が観察された。また,このメカニズムとしてROSの産生源の1つであるNADPH oxidaseの発現を抑制することが見いだされた。今回得られた知見は,抗酸化作用を考慮した降圧薬の選択に対する基礎的データを提供するものであり,最近,精力的に上市されている降圧薬の配合剤の有用性を示すものである。
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