2008 Fiscal Year Annual Research Report
p53、iNOSノックアウトを用いたトコトリエノールの抗腫瘍作用機序解析
Project/Area Number |
20790428
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
和田 小依里 Kyoto Prefectural University, 生命環境科学研究科, 講師 (60420709)
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Keywords | トコトリエノール / p53 / 抗腫瘍 / iNOS / Cox-2 |
Research Abstract |
ビタミンEであるトコトリエノールの抗腫瘍効果について研究を行った。すでに、マウス自然発症肝がんおよび2段階発症肺がんモデルで、トコトリエノールの経口投与が腫瘍抑制効果をもたらすことを報告しており、そのメカニズムの詳細な評価を行った。ヒト肝癌細胞細胞(HepG2 cell)やヒト大腸腺がん細胞(HT29 cell)で、α-, β-, γ-, δ-の4つの異性体を用いた実験を行った。すべての異性体はコントロールと比較して腫瘍細胞の増殖抑制効果を認めたが、中でもδ-トコトリエノールがもっとも強い細胞増殖抑制効果を有すことを確認した。そのメカニズムは、細胞周期制御作用ではなく、おもにアポトーシス誘導作用であることをフローサイトメトリーで確認した。アポトーシスを誘導する経路については、caspase-9、-3、-7およびPARPを介した経路であることをウエスタンブロッティングで解析した。また、caspase阻害剤投与でトコトリエノールの細胞増殖抑制効果がキャンセルされることも確認した。一方、間質細胞を用いた実験で、トコトリエノールはNO濃度を低下させ、Cox-2のタンパク発現およびプロスタグランジンE2産生を抑制することを確認した。大腸がんなどでは上皮細胞より先に、マクロファージや線維芽細胞でのCox-2の発現が確認されており、間質細胞のCox-2発現を抑制することにより発がん抑制が期待できる。我々の実験結果より、トコトリエノールは上皮細胞でcaspase-9、-3、-7を介したアポトーシス誘導を引き起こし、間質細胞からのCox-2発現を減少させることにより抗腫瘍効果を示す可能性が示唆された。
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