2009 Fiscal Year Annual Research Report
食品中の残留農薬曝露が若齢期のアレルギー疾患に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
20790432
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
柳澤 利枝 National Institute for Environmental Studies, 環境健康研究領域, 研究員 (70391167)
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Keywords | アレルギー・ぜんそく / マイクロアレイ / 環境 / 免疫学 / 衛生 |
Research Abstract |
近年、若年層を中心としたアレルギー疾患急増の要因として、環境因子の変化が考えられるが、その一つに環境化学物質の影響が挙げられる。本研究では、環境化学物質の一つとして食品中の残留農薬が若齢期のアレルギー疾患に及ぼす影響について、複数の病態モデル(アトピー性皮膚炎、アレルギー喘息)を用いて評価を行うことを目的とした。加えて、性差による影響の相違についても検討を行い、影響が認められた物質については、その作用機構の解明を試みた。 本年度は、アレルギー喘息モデルを用い、残留農薬の影響を評価した。C3H/HeJマウス(雌雄とも5週齢)に、アレルゲンとして卵白アルブミン(OVA)を隔週で、計4回、経気道的に曝露し、喘息モデルを作製した。対象物質は、有機塩素系農薬であるp,p'-ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、あるいはγ-ベンゼンヘキサクロライド(BHC)を用い、週1回、計7回、経口投与した。投与用量は、一日許容摂取量(ADI)を最低用量とし、その100倍を最高用量として、10倍希釈系列にて3用量設定した。その結果、p,p'-DDT曝露は、雌雄共に肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数、細胞構成に明確な影響を及ぼさなかった。一方、γ-BHC曝露では、雌マウスにおいて、用量依存的にBALF中の炎症細胞数が有意な増加を示した。病理組織学的検討においても、気管支周囲に好酸球を主体とした炎症細胞浸潤が観察された。加えて、肺組織ホモジネート上清中のIL-5、IL-13、eotaxin、KCなどが用量依存的に増加を示した。これより、γ-BHC曝露は、アレルギー喘息病態において、炎症性因子や白血球遊走因子の発現を増強することにより、アレルギー喘息を増悪しうる可能性が示唆された。また、農薬曝露は、アレルギー病態、性差によりその影響が異なると考えられた。
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