2009 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的遺伝子発現解析等を用いた食物アレルギーモデルに対する葛根湯の治療機序の解明
Project/Area Number |
20790472
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山本 武 University of Toyama, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (70316181)
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Keywords | 漢方薬 / 葛根湯 / 食物アレルギー / 腸管粘膜免疫系 / マイクロアレイ / サイトカイン / T細胞 / 粘膜型マスト細胞 |
Research Abstract |
食物アレルギー性疾患は近年の患者数の急増にもかかわらず、有効な治療方法は確立されていない。そこで、有効な治療薬の確立を目指し、ヒト類似食物アレルギー性消化器症状を発症する病態モデルを作製し、詳細な病態解析を行うと同時に治療薬の探索を行った。昨年までに、本疾患では全身免疫系よりも腸管粘膜免疫系が重要性であり、葛根湯がこの腸管粘膜免疫系に作用し、消化器症状を改善することを明らかにした。そこで本年度は、さらに葛根湯の詳細な作用機序の検討を行い、また有効成分の探索も行った。類似方剤や葛根湯の中の単味生薬及び含有成分の検討を行い、症状抑制には葛根が主として作用し、葛根が過剰に亢進した腸管粘膜免疫系を抑制することを明らかにした。しかし、葛根湯の作用は葛根のみの作用ではなく、浸潤増多した粘膜型マスト細胞の脱顆粒を有薬成分が抑制することも明らかにし、これらの生薬・成分が相加相乗に作用し食物アレルギー発症が抑制されることを明らかにした。また、葛根湯が腸管でのTh2サイトカイン量を減少させることからT細胞に対する検討を行った。その結果、葛根湯は腸管の粘膜固有層に分布するCD4^+T細胞の分化・活性化を抑制すること、また、制御性T細胞を増加させることを明らかにした。以上のことから、葛根湯は複数の成分による複合的な作用を示し、特に腸管におけるT細胞の制御因子への作用が大きいことが示唆された。葛根湯はこれら免疫系の制御因子を調節することにより腸管粘膜免疫系の破堤を改善し、食物アレルギー消化器症状に対し治療効果を発揮することが示唆された。
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