Research Abstract |
本研究では,動脈硬化の指標であるbrachial-ankle Pulse Wave Velocity(以下,baPWV)を指標として生活習慣病患者のタイプAが動脈硬化に及ぼす影響を性差に注目して検討した.対象は肥満,高血圧,高脂肪血症,高血糖の何れか1つ以上を有す未治療の男性230名(50.5±11.5歳),女性141名(50.0±10.9歳)であった.身体指標はbaPWV,上腕血圧,心拍数の血行動態測定,並びに,生化学データ,体組成データであった.心理指標はタイプA,不安,抑うつ感,ストレス性の食行動(喫煙,飲酒,過食)であった.全指標中,性差のみられた項目は,baPWV,タイプA,ストレス性の食行動(飲酒,喫煙)であり,それぞれ男性の値が女性よりも高値であった.相関分析では,男性のbaPWVと肝機能(γGTP)の間には相関が認められたが女性では認められなかった.baPWVと肝機能の関連についての性差検討のため,男女毎にタイプA,ストレス性の飲酒,γGTP,baPWVを観測変数とした共分散構造分析を行ったところ,男性では,タイプAがストレス性の飲酒行動を介してγGTPを高め,それによってbaPWVを高めるとの結果を得た.女性では,タイプAはストレス性の飲酒行動に影響したが,γGTPとbaPWVには影響しないことが分かった.男性では,タイプAゆえの過重労働等により,ストレスが増大し,飲酒量が多くなることで肝機能と動脈にダメージを与えるのかもしれない.女性のタイプAは,過重労働等により,飲酒行動が増加しても,肝機能と動脈へのダメージが少ない可能性がある.タイプAが,男性においてのみ身体に悪影響を与えるという点は,先行研究とも合致する.臨床的に,タイプAが顕著な男性の動脈硬化予防対策として,身体的な査定や治療に合わせて,心理行動面でのケアも女性以上に必要不可欠であろう.
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