2008 Fiscal Year Annual Research Report
劇症肝炎の集団発生例から得られたB型肝炎ウイルスを用いた劇症化機序の解明
Project/Area Number |
20790483
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 淳 Tohoku University, 病院, 医員 (60455821)
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Keywords | 肝臟学 / ウイルス性肝炎 |
Research Abstract |
B型肝炎ウイルス(HBV)による劇症肝炎は救命率の低い疾患であり、その機序を解明することで救命率を向上させる可能性がある。我々が最近経験した劇症肝炎の集団発生の原因となったHBV株は病原性が極めて高いと考えられ、病態解明の材料として優れていると考えられた。この株の持つ特徴、特に(1)ウイルス複製および(2)細胞障害性に関する特徴をin vitroの実験系で解明することで、劇症肝炎発症に関する新たな機序を解明することを目的とした。 まず、このHBV株には劇症化との関連が報告されているcore promoter変異(A1762T/G1764A)およびprecore変異(G1896A)に加え、特徴的な変異であるG1862Tが認められたため、これらの変異がHBV複製に与える影響について検討した。この劇症肝炎株を基に、1.3倍長のHBVゲノムを含むplasmidを作成し、肝癌細胞株HepG2にトランスフェクションしたところ、劇症肝炎株では細胞外のHBV量は野生株と比較して増加していなかったが、細胞内のHBV複製中間体が有意に増加していた。免疫染色により劇症肝炎株ではHBVコア蛋白が核内に蓄積していることが分かり、このことがHBVの細胞内への蓄積と関連していると考えられた(論文投稿中)。 次に、この劇症肝炎HBV株が細胞に与える影響を検討したところ、野生株と比較して劇症肝炎株において細胞生存性の低下が認められた。この変化は上記の変異と関連しており、特にG1862TがA1762T/G1764Aと共存する場合に細胞生存性が低下すると考えられた。これらの場合に培養液上清中のLDHが増加していることから、劇症肝炎HBV株に細胞障害性があるものと考えられた。また、caspase-3/7の増加は認められないためapoptoisの関与は否定的であり、別の経路による細胞障害が想定され現在検討を行っている。
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