2009 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄幹細胞の動員と分化誘導に基づく線維化改善・肝再生療法の試み
Project/Area Number |
20790511
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
東山 礼一 Tokai University, 医学部, 奨励研究員 (80459495)
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Keywords | 肝線維症 / 骨髄細胞 / コラーゲン / マトリックス分解酵素 |
Research Abstract |
肝線維症は肝炎ウィルスの持続感染やアルコールの過剰摂取などを原因として引き起こされる疾患であり、放置すれば終末像である肝硬変、さらに肝臓癌へと高率に進展する。コラーゲンをはじめとする細胞外基質(マトリックス)は生体組織の維持・修復に関わっているが、その含有量は合成系と分解系のバランスの上に維持されており、この調節機構が破綻するとマトリックス成分が過剰に蓄積され、臓器の線維症をきたす。 最近はさまざまな臓器に対する再生療法が数多く試みられ、線維肝組織においては骨髄由来細胞がコラーゲン合成を促進するという報告と、分解を促進するという一見相反する報告がある。しかしより重要であるのは、これらの細胞に対する適切な分化誘導を行い効果的な線維化改善と肝再生を得ることと考えられる。 そこで本研究では、実験的肝線維症において骨髄から肝内に生着した細胞がコラーゲン分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-13やMMP-9を順次発現して線維化改善に寄与するという本研究者自身の知見に基づき、骨髄細胞の線維肝組織への動員とMMP産生細胞への分化誘導を促進する物質の探索を開始した。MMP-13発現アデノウィルスを肝線維症マウスに投与したところ、MMP-13の強制発現により骨髄由来細胞の線維肝組織への流入・生着と肝類洞壁細胞への分化促進が認められた。また骨髄由来細胞のみMMP-13/-9を産生する肝線維症マウスを解析したところ、肝組織中に骨髄由来のMMP-13/-9遺伝子発現が確認され、線維吸収部位に一致したMMPの発現と酵素活性を認めたことから、骨髄細胞由来MMP-13/-9の肝線維化改善への直接的な関与が示された。この過程でみられる増殖因子の活性化と肝類洞構造の修復機序を明らかにすることで、骨髄幹細胞の動員と分化誘導に基づく線維化改善と肝再生促進治療法の開発を目指している。
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