2008 Fiscal Year Annual Research Report
心血管系のPHD2を標的とした血管新生誘導の試みと治療への応用
Project/Area Number |
20790536
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武田 宏太郎 Kyushu University, 医学研究院, 客員助教 (50467908)
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Keywords | PHD / HIF / 低酸素 |
Research Abstract |
当該年度は本研究の1年目にあたり、酸素濃度感知システムの中心分子であるProlyl hydroxylase domain protain (PHD)の阻害が心血管系に保護的に作用するという仮説に基づいて、培養細胞を用いた解析を行ってきた。PHDは低酸素誘導性転写因子HIFを負に調節する分子であり、すでにPHD阻害がHIFを増加させ、血管新生や虚血耐性効果をもたらすことが報告されている。我々は、ヒト、マウスなどに発現するPHD1, 2, 3と呼ばれる3種類のアイソフォームの役割を、マクロファージや血管平滑筋細胞を用いて解析を行ってきた。RNA干渉 (shRNA) による各アイソフォームのノックダウン実験を行ったところ、従来の知見と一致して、PHD2のノックダウンにより、HIF-1aが増加し、HIFの標的遺伝子である血管内皮増殖因子 (VEGF) の増加が確認され、これらの細胞においても、PHD2がHIFの主要な調節因子であることが明らかとなった。さらに、心血管病変の進展において重要な役割をはたす炎症性サイトカイン発現やレニン・アンギオテンシン系に与える影響も解析した。コバルトやDMOGなどのPHD阻害薬がこれらの系に対して抑制的に作用することを見出し、PHD阻害が心血管保護的に作用する可能性が示唆された。面白いことに、HIF-1aをノックダウンしても効果が維持されるため、PHDシグナル経路において新たなHIF非依存性の経路の存在が示唆された。現在はこの経路の解析とともに、各PHDアイソフォーム欠損マウスを用いた心筋梗塞モデルや肥大心モデルの解析が進行中である。
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