2009 Fiscal Year Annual Research Report
心不全における転写因子NRSFの役割、心副腎連関について
Project/Area Number |
20790543
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
染川 智 Nara Medical University, 医学部, 助教 (90453167)
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Keywords | NRSF / NRSE / アルドステロン / 副腎 / 心不全 |
Research Abstract |
心不全では胎児型遺伝子の再発現現象が認められるが、その代表であるANP(心房ナトリウム利尿ペプチド)やBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)遺伝子の転写調節機序を解明中に、ANP,BNP遺伝子は正常状態では、NRSF(Neuron restrictive silence factor)/NRSE(Neuron restrictive silencer element)系が強く転写を抑制しているが、肥大刺激時にはその転写抑制が回避されることによりANP,BNP遺伝子が再発現することを発見した。サプレッサーであるNRSFはNRSE配列に結合しNRSE含有遺伝子の転写を抑制する。 心不全時には副腎皮質からアルドステロンの分泌が亢進する。その機序はレニン-アンジオテンシンを介したアルドステロン合成酵素CYP11B2の発現亢進が関与するとされている。我々はコンピュータによるゲノム解析でそのCYP11B2をコード遺伝子する遺伝子調節領域にもNRSE配列が存在することを発見した。そこで、副腎細胞でもNRSF/NRSE系の転写調節機序が機能しており、アルドステロン分泌に関与していないかを検討した。我々はアルドステロン分泌のin vitro研究モデルである培養副腎細胞〔H295R cell〕でDnNRSF(Dominat negative form NRSF)を使用して内在性のNRSFの機能を破綻させるとCYP11B2遺伝子の発現が著名に上昇し,アルドステロン分泌が亢進することを確認した。その効果はアルドステロンの強力な刺激因子であるアンジオテンシンII(AngII)やカリウム(K^+)に匹敵する。CYP11B2遺伝子のNRSE配列が実際にCYP11B2遺伝子のプロモータを抑制するか、ルシフェラーゼレポータ実験などで確認し、また、CYP11B2遺伝子のNRSEがNRSFと結合していて遺伝子調節に関与しているかをGel Shift AssayやChIP Assayでも確認した。また、 NRSF/NRSE系の心不全時における心筋細胞以外への関与として、心不全の進展に深く関与する副腎のアルドステロン合成にもこのNRSF/NRSE系の関与があるかを確認することができ、心臓と副腎で心不全時に共通の転写調節機序が働いている可能を示した。結果はEndocrinology150(7):3110-3117,2009に発表した。
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