2008 Fiscal Year Annual Research Report
水素の抗酸化作用による心筋虚血再灌流障害抑制効果の検討
Project/Area Number |
20790544
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林田 健太郎 Keio University, 医学部, 助教 (20383862)
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Keywords | 虚血再潅流障害 |
Research Abstract |
水素ガスの吸入による虚血再潅流障害抑制効果の検討 虚血再潅流障害に対し近年新しい治療戦略として硫化水素、一酸化炭素、一酸化窒素などの"Gas Therapy"が脚光を浴びつつあるが、私は、水素ガスが細胞障害性ラジカルのみを選択的にスカベンジし、しかも活性酸素の主たる発生源であるミトコンドリアや核にも効率よく拡散していくことに着目し(Nat Med. 2007)、ラットの心筋虚血再潅流モデルにおいて水素ガス吸入の再潅流障害抑制効果について詳細な検討を行った。 平成20年度は、in vivoモデルで人工呼吸器下に2%水素ガスを投与し組織中の水素濃度を水素電極を用いて直接測定したところ、血液中や正常心筋内のみならず虚血心筋内でさえも水素濃度が上昇し、非虚血心筋の70%に達することを確認した(図1)。さらに虚血再潅流24時間後にTTC染色を行い梗塞巣の大きさを評価したところ、水素ガス投与群において梗塞領域が最大約50%縮小することを明らかにした(図2)。またその際水素ガスが動脈血酸素飽和度や血圧、心拍数などの血行動態に悪影響を及ぼさないことも確認した。さらに8週間後に心エコー図で左室機能を評価したところ、水素ガス吸入群では左室リモデリングが抑制され左室収縮能が改善することも明らかにした。ランゲンドルフ摘出潅流心における検討でも水素投与群で左室機能の改善が促進されることを確認した。そのメカニズムとして、in vitroでラット初代培養心筋細胞においてAntimycinAや細胞内Fenton反応によって急性酸化ストレス障害を加えたところ、水素ガスが細胞毒性の高いヒドロキシラジカルのみを選択的に消去しミトコンドリア膜電位を保ち細胞死を抑制することを明らかにした(図3, 4)。以上の研究結果は2008年Biochem Biophys Res Communに報告した。
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