2009 Fiscal Year Annual Research Report
筋萎縮性側索硬化症における非自律性神経細胞死の病態解明
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20790630
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山下 博史 The Institute of Physical and Chemical Research, 運動ニューロン変性研究チーム, 研究員 (60402913)
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Keywords | 神経変性疾患 / 神経病態生化学 / 筋萎縮性側索硬化症 / マイクログリア |
Research Abstract |
1. マイクロアレイを用いた実験の結果よりマトリックスメタロプロテアーゼ12(MMP12)がG85R変異SOD1発現マウス脊髄にてB6マウス脊髄と比較して22.8倍に増加していた。MMPファミリーを定量的RT-PCRにて変動を検証、その中ではMMP12のみが顕著に変動することを確認した。免疫組織染色にてマウス脊髄病巣のMac2陽性マイクログリアの一部にMMP12が陽性で共染色されることを確認した。MMP12はマイクログリアの遊走に必要であり、またMMP12による細胞外マトリックス分解産物が走化性物質として作用するとの既報告等も考慮し、G93A変異SOD1発現マウスとMMP12ノックアウトマウスの交配実験を行った。運動障害の発症時期と、生存期間の両方についてMMP12ノックアウトの効果を検討したが、統計的に有意な変動を認めなかった。本実験からMMP12が筋萎縮性側索硬化症において非自律的運動神経細胞死をもたらすマイクログリアのエフェクターとしては作用していないことが明らかとなった。 2. 変異SOD1を発現するマイクログリアがより多くのReactive Oxygen Speciesやサイトカインを産生し運動神経に対して毒性を発揮する可能性が報告されているので、脊髄病巣へのマイクログリアの遊走を抑制することにより疾患の進行を抑制できる可能性がある。マイクログリアの遊走因子の一つとしてATPが報告されており、ATPによるマイクログリアの遊走に関する受容体の一つとしてP2X4が報告されている。我々は、まず変異SOD1発現マウスの脊髄病巣のマイクログリアにP2X4が発現していることを組織免疫染色にて確認した。次にG93A変異SOD1マウスとP2X4ノックアウトマウスの交配実験を行った。雄マウスでは、発症時期・生存期間ともにP2X4ノックアウトの影響は認めなかった。一方、雌マウスでは生存期間がP2X4ノックアウトにより平均生存日数が159日から164日に延長したが、統計学的有意差は検出できなかった。以上から変異SOD1マウスの雌においては、P2X4活性を抑制することにより延命効果が得られる可能性が示唆された。
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