2009 Fiscal Year Annual Research Report
肝内細胞間ネットワークの破綻が肝細胞のインスリン抵抗性を惹起する機序の解明
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20790641
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
和田 努 University of Toyama, 医学薬学研究部(薬学), 助教 (00419334)
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Keywords | メタボリックシンドローム / NAFLD / NASH / アルドステロン |
Research Abstract |
8週齢の雄C57BL/6Jマウスを(1) 通常食(Control)、(2) 通常食下SP投与群(SP)、(3) 60%高脂肪食、30%高フルクトース水負荷群(HFFD)、(4) HFFD下SP投与群(HFFD+SP)の4群に分け、8週間の食事負荷を行った。Control群に比べHFFD群は高血圧、糖脂質代謝異常、脂肪肝を示し、メタボリックシンドロームの表現系を呈した。HFFD群で認められた体重と精巣上体脂肪重量の増加はHFFD+SP群では低下し、収縮期血圧も低下した。血清生化学検査ではHFFDで認められた空腹時血糖、インスリン、HOMA-Rの上昇と血清TG、NEFA、コレステロール、レプチンの上昇もHFFD+SP群では有意に低下した。また、グルコース酸負荷試験とインスリン負荷試験で認められた耐糖能障害とインスリン抵抗性も改善し、ピルビン酸負荷試験において観察された糖新生の亢進もHFFD+SP群ではControl群と同程度まで改善した。肝組織の検討では、HFFD群において認められた肝小葉中心性のトリグリセリドの顕著な蓄積は、HFFD+SP群において効果的に改善された。 さらにHFFD群では肝臓において顕著に上昇した炎症性サイトカイン(TNFα, MCP1)・糖新生酵素(PEPCK)・脂質合成系転写因子及び酵素(PGC1, ChREBP, SCD1)等のmRNAの発現上昇が認められたが、これらはHFFD+SP群で有意に抑制された。これらの結果に対し、初代培養肝細胞および肝培養細胞株であるHepG2細胞にアルドステロンを直接作用させても明らかなインスリンシグナルの低下は認められず、SPの処置も影響が無かったことから、SPの主な標的細胞は肝細胞ではなく炎症性サイトカインを産生するクッパー細胞であると考えられた。 以上の結果から、SPはHFFDマウスの肝臓において炎症を抑制することで肝のインスリン抵抗性を改善し、耐糖能異常、高脂血症、脂肪肝を改善した。以上の結果から、SPは食事誘発性のメタボリックシンドローム病態を改善する効果的な薬剤となる可能性が示唆された。
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