2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20790657
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 賢忠 The University of Tokyo, 医科学研究所, 助教 (70396878)
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Keywords | グルココルチコイド / グルココルチコイド受容体 / 心筋代謝 / アミノ酸代謝 / プロスタグランジン合成 / 虚血再灌流後心筋障害 / 転写制御 / 副賢皮質ステロイドホルモン |
Research Abstract |
【研究目的】心筋におけるグルココルチコイド(GC)作用を、グルココルチコイド受容体(GR)とその標的遺伝子を基軸として詳細に究明し、その生理学的意義を明らかにする。 【研究成果】 ・GR選択的拮抗薬RU486とGR選択的アゴニストコルチバゾール、GR発現調節系を組み合わせ、高効率にGC-GR制御系に選択的な標的遺伝子を抽出するシステムを確立した。この系を用い、心筋細胞におけるGC-GR特異的標的遺伝子群を明らかにし、GC-GRが心筋代謝制御に重要であることを明らかにした。 ・GRは心筋細胞肥大制御や肝糖新生に重要な転写因子KLF15の遺伝子発現を誘導し、KLF15の標的遺伝子である分枝鎖アミノ酸転移酵素BCATmの発現などを促進することにより、心筋のアミノ酸代謝を制御することを明らかにした。 ・GCの抗炎症作用の一部はGRによるシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、フォスフォリパーゼA2(PLA2)の遺伝子発現抑制であるが、心筋細胞ではGRはこれらの遺伝子発現をむしろ誘導することを明らかにした。 ・心筋においてGRはCOX-2、PLA2、プロスタグランジンD合成酵素の遺伝子発現を協調的に誘導し、プロスタグランジンD2合成を促進させ、例えばErk1/2の活性化、心筋細胞のアポトーシス抑制などを介して虚血再還流後心筋障害に対し保護的に作用することを明らかにした。 ・心筋において、転写伸長反応抑制核内タンパク質であるHEXIM1がGRによる遺伝子発現誘導作用を負に制御していることを明らかにした。 【研究成果の意義、重要性】 ・ミネラルコルチコイド(MC)との交叉性を排除したGC-GR選択的標的遺伝子群同定方法を確立した。同方法は、全身の組織に適応可能で、心筋あるいは脳などのGC、MC競合組織では特に有用であり、現在解析を展開している。 ・GCにより組織特異的な発現制御を受けるモデル遺伝子を同定したことにより、組織特異的遺伝子発現制御機構の解明や副作用分離型GC新薬開発にも応用可能と考えられる。 ・本成果は心筋におけるアラキドン酸代謝、プロスタグランジン合成、アミノ酸代謝の新知見であり、心筋代謝生理の理解を進展させた。 ・虚血再潅流後心筋障害治療法として新たにGC-GR制御系を利用した治療法開発の可能性を提示した。 ・心筋におけるGRによる転写制御機構に転写伸長反応抑制因子も相互作用していることが明らかになった。
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