2009 Fiscal Year Annual Research Report
Nesfatin-1を介した摂食抑制経路:末梢満腹因子-脳幹-視床下部連携
Project/Area Number |
20790663
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
前島 裕子 Jichi Medical University, 医学部, 助教 (40438669)
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Keywords | 生理学 / Nesfatin-1 / 摂食中枢 / 室傍核 / 孤束核 |
Research Abstract |
Nesfatin-1は2006年に発見された摂食抑制、体重減少ペプチド(Oh-I et al. Nature 2006)で、レプチンの摂食抑制機序とは独立して作用することから、過食・肥満治療において期待されつつあるペプチドである。2008年度本研究においてNefatin-1は室傍核(PVN)オキシトシン(Oxt)、孤束核(NTS)プロピオメラノコルチン(POMC)ニューロンを介して摂食抑制することを明らかにした。 2009年度においてはさらに2008年度の発見を進展させるため、Nesfatin-1によるOxt分泌メカニズムを追究した。PVN Nesfatin-1は高い頻度でOxtと共局在または隣接して分布しており、Nesfatin-1のPVNにおける免疫電顕では、Nesfatin-1は分泌顆粒内に存在することから、分泌ペプチドであることが明らかになった。また、PVNスライスを作成し、Nesfatin-1を添加するとスライスからのOxt分泌が増加し、抗Nesfatin-1 IgGを処理するとOxt分泌は減少した。このことからNesfatin-1はPVNにおいてparacrineやautocrineのような作用機序でOxtの分泌を促進することが明らかになった。 2008年度の本研究結果は中枢におけるNesfatin-1がOxtを介して摂食を抑制するという作用機序を明らかにした。Oxtの摂食抑制作用は以前から報告されていたが、そのメカニズムはほとんど知られていなかった。Oxtは摂食抑制のみならず近年では中枢作用として社会行動や親子関係の形成に重要なホルモンとして認知されつつある。そのニューロンの活性化因子の一つがNesfatin-1ニューロンであるという発見は、生命科学の分野において大きな意義を持ち、肥満治療におけるNesfatin-1の臨床応用への一助となると考えられる。
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