2008 Fiscal Year Annual Research Report
B型肝炎既往者における造血細胞移植後のHBV再燃予防のための臨床介入試験
Project/Area Number |
20790667
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野澤 真弘 Hokkaido University, 北海道大学病院, 助教 (70455632)
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Keywords | B型肝炎ウイルス / 造血細胞移植 / B型肝炎ワクチン / HBVリバースセロコンバージョン |
Research Abstract |
HBs抗体陽性のHBV既往感染者は、通常、獲得された免疫(HBs抗体)は生涯にわたり維持され、再びB型肝炎を起こすことはない。しかし、多くの場合、HBs抗体出現後も肝組織にはPCR法で検出可能なHBVDNAが残存することが報告されている。HBV感染においてHBs抗体獲得後にこれらの静的状態のHBVが再活性化し、ウイルス血症・肝炎を来す病態がリバース・セロコンバージョン(RS)として報告されている。 我々はHBV既往患者の同種造血幹細胞移植後のRSについて解析し、移植後HBs抗体価は徐々に減少し、移植後5年までに100%の症例で消失してしまうこと、移植後5年までのRS発症は実に70%に及ぶことを明らかにした。これまでの報告では、RS発症のリスクは慢性GVHDの存在や、免疫抑制剤の使用とその中断に関連づけて考察されたものしかなかったが、我々は、HBV感染の最終中和抗体である"HBs抗体の消失"こそが最大のRS発症リスクであることを世界で初めて明らかにした。そして、その発症頻度はこれまで考えられていたよりも遥かに高頻度であった。我々は、HBV-RSはHBs抗体の推移をフォローすることによって"発症予測"が可能な病態であるのみならず、適切な時期のワクチン投与によりHBs抗体価を保っことで"予防"も可能な病態と考えた。 造血細胞移植前に血清学上HBV感染既往と診断されるレシピエントについて、移植後免疫抑制剤中止後に組み替えHBワクチンを投与した。ワクチン接種を行った13症例のうち、8症例でHBs抗体価の上昇を認めた。移植後地元病院フォローとなった症例や、長期の免疫抑制剤使用によりHBワクチン投与ができなかった12症例では3例のHBV-RSを認めたが、HBワクチン投与を行った13例からは1例もHBV-RSの発症を認めなかった。予想通りの結果が得られており、今後さらに症例を蓄積するとともに、学会、論文を通して成果を発信していく予定である。
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Research Products
(2 results)