2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規サイトカインIL-17Fの気道リモデリングへの関与
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20790697
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川口 未央 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (50365748)
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Keywords | 気管支喘息 / IL-17F / 気道リモデリング |
Research Abstract |
2001年に我々が報告したIL-17Fは喘息との関与が示唆されているがその詳細な役割は不詳である。一方、吸入ステロイド薬によって喘息の長期管理は容易となってきたが、重症喘息では抗喘息薬の効果は決して高くなく、今後の喘息治療における大きな課題である。その原因の一つとして気道リモデリングが挙げられる。IL-11とIGF-Iは気道リモデリングの形成に深く関与する。そこでIL-17Fが気道上皮細胞からIL-11とIGF-Iの発現を誘導するという仮説を立て検討した。まずヒト正常気道上皮細胞及びヒト気道上皮細胞株であるBEAS-2B細胞をIL-17Fで2~48時間刺激した。IL-11とIGF-IのmRNAの発現をリアルタイムPCRで、上清中のIL-11及びIGF-Iの蛋白濃度をELISAにて検討した。次にIL-4、IL-13単独もしくはIL-17Fと共刺激し、24時間後に上清を回収し、IL-11及びIGF-Iの蛋白濃度をELISAで測定した。次に各種阻害剤の抑制効果を検討した。MEK阻害剤(PD98059,U0126)、Raf1 kinase阻害剤(Raf1 kinase inhibitor I)、p38 MAPK阻害剤(SB202190)、JNK阻害剤(SP600125)、MSK1阻害剤(H89、Ro-31-8220)、DMSOで前処理後にIL-17Fで刺激し、24時間後の上清中のIL-11及びIGF-Iの蛋白濃度をELISAにて測定した。次にIL-17FによるMSK1のリン酸化の検討をWestern blottingを行った。さらにPD98059によるMSK1のリン酸化に与える影響を同様に検討した。次にMSK1、CREB、controlのsiRNAをBEAS-2B細胞に移入し、IL-17FによるIL-11及びIGF-Iの産生に対する抑制効果をELISAで検討した。最後にMSK1のsiRNAを移入したBEAS-2B細胞をIL-17Fで刺激し、CREBへの影響をWestern blottingにて検討した。統計学的有意差はANOVA with Scheffe F-testにて検討し、P value 0.05以下の相違をもって有意とした。その結果、IL-17Fは2種類の気道上皮細胞からIL-11とIGF-Iの発現を強力に誘導し、Th2サイトカインによってその発現は有意に増強した。発現メカニズムとしてRaf1-MEK1/2-ERK1/2を上流としたp90RSK-CREBおよびMSK1-CREBの2つの下流シグナル伝達経路が重要であることを明らかにした。このことからIL-17Fやそのシグナル伝達経路が喘息、特に重症喘息の新たな治療標的になる可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)