アレルギー性炎症におけるIL-33の作用解析と治療応用の試み

2009 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 20790698
• Research Institution: Teikyo University
• Principal Investigator: 鈴川 真穂 Teikyo University, 医学部, 助手 (20453699)
• Keywords: IL-33 / ST2 / アレルギー / 喘息 / サイトカイン

Research Abstract

前年度の研究から、IL-33が炎症細胞を活性化することにより、アレルギー性炎症を増悪することが示唆された。そこで本年度はIL-33によるアレルギー性気道炎症の増悪機序を解明するために喘息モデルマウスおよび培養ヒト気道上皮細胞BEAS-2Bを用いて研究を行った。
始めに、A/JマウスをOVA/Alumで感作、チャレンジを行うことによる喘息モデルマウスを用い、肺および血中IL-33の発現を解析した。BALF、血清中のIL-33値に差を認めなかったが、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞を用いたReal-time PCRでは、喘息モデルマウスで有意なIL-33発現増強を認めた。次に喘息モデルマウスにIL-33を点鼻投与し、気道炎症を解析した。IL-33投与群では、アセチルコリンによる気道過敏性の有意な上昇を認めた。また、IL-33投与群でBALF中総細胞数、好酸球数、EPO活性、IL-12、IL-1β、KC、および血清中OVA特異的IgE値が有意に高値であった。肺組織のH&E染色、PAS染色標本では、IL-33投与群で炎症細胞浸潤の増悪および杯細胞過形成を認めた。
次に構造細胞であるBEAS-2Bに対するIL-33の作用を解析した。フローサイトメトリーにより、BEAS-2B細胞内ST2の発現を認めた。IL-33単独の刺激では、BEAS-2Bによるサイトカイン産生の変化を認めなかったが、IL-4と同時に作用させるとIL-6産生が増強され、TNFαと同時に作用させるとeotaxinおよびIL-8の産生が有意に増強された。
以上の結果から、喘息モデルマウスではIL-33のmRNA発現が上昇しており、IL-33により気道炎症が増悪すること、またIL-33は気道の構造細胞である気道上皮細胞にも作用して、炎症性サイトカインの産生亢進を惹起し、アレルギー性炎症を増悪させることが示唆された。

Research Products

• [Journal Article] IL-33-induced activation of human basophils and eosinophils via ST2. (2010)
  • Author(s): Maho Suzukawa, Masao Yamaguchi, Motoyasu Iikura, Rikiya Koketsu, Akiko Komiya, Hiroyuki Nagase, Susumu Nakae, Kenji Matsumoto, Hirohisa Saito, Kouji Matsushima, Kazuhiko Yamamoto, Ken Ohta.
  • Journal Title: Inflammation and Regeneration (In press)
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] A case of anaphylactic reaction following Matsudake mushroom ingestion : Demonstration of histamine release reaction of basophils (2010)
  • Author(s): Takako Toda, Masao Yamaguchi, Yuko Nakase, Naoya Sugimoto, Maho Suzukawa, Hiroyuki Nagase, Ken Ohta
  • Journal Title: Allergology International (In press)
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] 帝京大学医学部附属病院内科における非小細胞肺癌症例の検討. (2009)
  • Author(s): 長瀬洋之, 小島康弘, 吉原久直, 山村浩一, 竹澤智湖[矢野], 戸田貴子, 原麻恵, 安間のりこ, 谷貝朋美, 新井秀宜, 倉持美知雄, 鈴川真穂, 石田博文, 田下浩之, 足立哲也, 鈴木直仁, 大田健.
  • Journal Title: 帝京医学雑誌 32(2) Pages: 129-138
  • Peer Reviewed
• [Presentation] IL-33によるアレルギー性気道炎症増悪とその機序に関する解析. (2010)
  • Author(s): 鈴川真穂, 原麻恵, 飯倉元保, 中江進, 長瀬洋之, 山口正雄, 大田健.
  • Organizer: 第22回気道病態研究会
  • Place of Presentation: 東京
  • Year and Date: 2010-02-27
• [Presentation] 間質性肺炎病態にアポリポ蛋白Eが及ぼす役割. (2010)
  • Author(s): 小島康弘, 長瀬洋之, 鈴川原久直, 戸田貴子, 倉持美知雄, 田下浩之, 新井秀宜, 山口正雄, 鈴木直仁, 中野純一, 山下直美, 大田健.
  • Organizer: 第44回日本成人病(生活習慣病)学会
  • Place of Presentation: 都市センターホテル
  • Year and Date: 2010-01-09
• [Presentation] IL-33によるアレルギー性気道炎症増悪機序の解析. (2009)
  • Author(s): 鈴川喜穂, 原麻恵, 飯倉元保, 中江進, 長瀬洋之, 山口正雄, 大田健.
  • Organizer: 第13回アレルキー・気道上皮細胞研究会
  • Place of Presentation: シェーンバッハ・サボー
  • Year and Date: 2009-12-19
• [Presentation] マツタケによりアナフィラキシー症状を呈し、prick to prick testで陽性を示した1例. (2009)
  • Author(s): 戸田貴子, 原麻恵, 小島康弘, 竹澤智湖, 山村浩一, 鈴川真穂, 倉持美知雄, 田下浩之, 新井秀宜, 中野純一, 長瀬洋之, 山口正雄, 鈴木直仁, 大田健.
  • Organizer: 第64回臨床アレルギー研究会
  • Place of Presentation: 富国生命ビル
  • Year and Date: 2009-11-28
• [Presentation] 好酸球と臨床・アレルギー病態病態と症例Th17系サイトカインが好酸球からのサイトカイン放出に及ぼす影響. (2009)
  • Author(s): 戸田貴子, 長瀬洋之, 鈴川喜穂, 原麻恵, 小島康弘, 倉持美知雄, 田下浩之, 新井秀宜, 山口正雄, 大田健.
  • Organizer: 第59回アレルギー学会秋期学術大会
  • Place of Presentation: 秋田
  • Year and Date: 2009-10-30
• [Presentation] 食物アレルギー・薬物アレルギー病態生理と治療病院スタッフを対象としたアナフィラキシー講習会参加者アンケートの結果. (2009)
  • Author(s): 山口正雄, 纐纈力也, 鈴川真穂, 川上綾子, 小宮明子, 山田浩和, 長瀬洋之, 山本一彦, 大田健.
  • Organizer: 第59回アレルギー学会秋期学術大会
  • Place of Presentation: 秋田
  • Year and Date: 2009-10-30
• [Presentation] ヒト好塩基球の分離と機能評価の実際. (2009)
  • Author(s): 山口正雄, 鈴川真穂, 纐纈力也, 長瀬洋之, 大田健.
  • Organizer: 第59回アレルギー学会秋期学術大会
  • Place of Presentation: 秋田
  • Year and Date: 2009-10-30
• [Presentation] IL-33-induced activation of human basophils and eosinophils via ST2. (2009)
  • Author(s): Maho Suzukawa, Masao Yamaguchi, Motoyasu Iikura, Rikiya Koketsu, Akiko Komiya, Hiroyuki Nagase, Susumu Nakae, Kenji Matsumoto, Hirohisa Saito, Kouji Matsushima, Kazuhiko Yamamoto, Ken Ohta.
  • Organizer: 第9回国際炎症学会(第30回日本炎症・再生医学会合同開催)
  • Place of Presentation: 京王プラザホテル
  • Year and Date: 2009-07-07
• [Presentation] IL-33によるアレルギー性気道炎症増悪機序の解析. (2009)
  • Author(s): 鈴川真穂, 原麻恵, 飯倉元保, 中江進, 長瀬洋之, 山口正雄, 大田健.
  • Organizer: 第23回アレルギー・好酸球研究会2009
  • Place of Presentation: 大手町サンケイプラザ
  • Year and Date: 2009-06-20
• [Presentation] ApoE欠損マウスにおけるシリカ肺傷害に対するApoE isoformの補充効果. (2009)
  • Author(s): 小島康弘, 長瀬洋之, 鈴川原穂, 原麻恵, 吉原久直, 石田博文, 足立哲也, 鈴木直仁, 大田健.
  • Organizer: 第49回日本呼吸器学会学術講演会
  • Place of Presentation: 東京国際フォーラム
  • Year and Date: 2009-06-12
• [Presentation] Poly I : Cによるウイルス感染喘息増悪モデルにおけるシステイニルロイコトリエンの関与. (2009)
  • Author(s): 原麻恵, 長瀬洋之, 小島康弘, 鈴川真穂, 足立哲也, 鈴木直仁, 大田健.
  • Organizer: 第49回日本呼吸器学会学術講演会
  • Place of Presentation: 東京国際フォーラム
  • Year and Date: 2009-06-12
• [Presentation] 喉頭ファイバー施行直後にアナフィラキシーを発症した3症例の検討. (2009)
  • Author(s): 鈴川真穂, 纐纈力也, 川上綾子, 小宮明子, 木村美和子, 二藤隆春, 山口正雄, 山本一彦, 大田健.
  • Organizer: 第21回日本アレルギー学会春期臨床大会ミニシンポジウム
  • Place of Presentation: 長良川国際会議場
  • Year and Date: 2009-06-06
• [Book] 【好塩基球新たな視点からみたアレルギー性炎症の誘導】IL-33によるヒト好塩基球活性化.炎症と免疫.18(1) (2009)
  • Author(s): 鈴川真穂
  • Total Pages: 7
  • Publisher: 先端医学社
• [Book] 【咳漱そのcommonで多様な疾患領域】急性咳漱の鑑別診断.総合臨床.58(10) (2009)
  • Author(s): 鈴川真穂, 大田健
  • Total Pages: 5
  • Publisher: 永井書店
• [Book] アナフィラキシーに関する最近の話題.Alergia Trends. 11(2) (2009)
  • Author(s): 鈴川真穂
  • Total Pages: 4
  • Publisher: メディカルレビュー社