Research Abstract |
申請者は前年度期間中に,重症先天性好中球減少症(SCN)の責任遺伝子の一つであるELA2のcDNAを,レトロウイルスtet-on遺伝子発現系ベクターに組み込み,正常のELA2,既存の患者で認める変異ELA2(P110L,R101Q,C194X)を発現するコンストラクトを作成し,それらのコシストラクトをP-tre応答ベクターを安定導入させたヒト白血病細胞株(HL-60)にリポフェクション法で遺伝子導入を試みたが,遺伝子導入の効率が悪く,解析を行うことができなかった。そこで当該年度では,p-tre応答ベクターを安定導入させたHEK293細胞を作成した。作成したHEK293細胞に対して,リポフェクション法で遺伝子導入を行い検討したが,ドキシサイクリン投与によりELA2の発現は誘導できるものの,細胞傷害性が非常に強く思うような解析ができなかった。細胞障害は,野生型ELA2,変異型ELA2を導入した細胞の双方で認められた。印象として野生型を導入した細胞の方が,より強い細胞障害性が認められる傾向があるように思われた。そのため,発現した好中球エラスターゼのプロテアーゼ活性が細胞障害性に働いている可能性が考えられた。現在,ドキシサイクリンの投与量を細かく調節することでELA2の発現量を調整し,細胞障害が比較的軽度の状態で観察できる実験系を検討している。 ELA2発現が適切にコントロールできる系が完成した後の次のステップの準備として,ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞を用いて,マウスで骨髄再構築する検討を行った。まず,マグネットビーズで純化したCD34陽性細胞を用いてNOD/SCID/β2MG nullマウスで骨髄再構築を行い,比較的安定して骨髄再構築ができるようになってきている。
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