2008 Fiscal Year Annual Research Report
造血異常とリボソームタンパク質の変異 : ゼブラフィッシュを用いたアプローチ
Project/Area Number |
20790734
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
上地 珠代 University of Miyazaki, フロンティア科学実験総合センター, 研究員 (10381104)
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Keywords | リボソームタンパク質 / ゼブラフィッシュ / ダイヤモンド・ブラックファン貧血 / 造血異常 / モルフォリノアンチセンスオリゴ / 翻訳異常 / 赤芽球 / リボソーム病 |
Research Abstract |
先天性の赤芽球形成不全であるダイヤモンド・ブラックファン貧血(DBA)の患者において、6種類のリボソームタンパク質(RP)遺伝子の変異が報告された。これらは、すべての細胞において翻訳活動を担うリボソームの構成成分をコードする。それらの変異がなぜ造血系に強い影響を及ぼすのかを解明し、治療法の開発へと発展させるためには、モデル動物を用いた解析が必須である。 そこで、ヒトと同様の造血プロセスを有するゼブラフィッシュを用いて、DBAモデルの作成を試みた。DBAの責任候補遺伝子の一つであるRPS19に対するアンチセンスオリゴを用いてS19タンパク質の発現を抑制すると、受精後48時間までに著しい赤血球数の低下がみられた。血管形成、単球、顆粒球の形成は阻害されないことを確認した。赤血球数は合成RPS19mRNAの注入により回復した。また、患者型の変異を挿入した合成mRNAでは血球数の回復はみられなかった。これらのことから、RPS19が造血に重要な役割を果たすことが示唆された。また、S19抑制胚の赤血球は完全に成熟していなかった。この成熟過程に関わる因子の翻訳が特異的に影響を受ける可能性がある。これを明らかにするためには、リボソームと結合しているmRNAの頻度を解析することが有効であると考えた。そこで、酵母などに用いられるポリソーム解析手法のゼブラフィッシュへの応用を試みた。ショ糖密度勾配遠心法によりポリソーム(複数のリボソームがmRNAを翻訳している状態)を分画し、そこからmRNAを精製した。今後は、これらmRNAを用いてマイクロアレイまたは次世代シーケンサーによる発現頻度の解析を進めていく。 ゼブラフィッシュを用いることで、初めて脊椎動物のDBAモデルを作成することができ、さらに、リボソームの翻訳制御の変化による疾患群「リボソーム病」発症機序を探求するための基盤技術を確立することができた。
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