2009 Fiscal Year Annual Research Report
造血異常とリボソームタンパク質の変異:ゼブラフィッシュを用いたアプローチ
Project/Area Number |
20790734
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
上地 珠代 University of Miyazaki, フロンティア科学実験総合センター, 研究員 (10381104)
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Keywords | リボソームタンパク質 / ゼブラフィッシュ / ダイヤモンド・ブラックファン貧血 / 造血異常 / モルフォリノアンチセンスオリゴ / 翻訳異常 / 赤芽球 / リボソーム病 |
Research Abstract |
先天性の赤芽球形成不全であるダイヤモンド・ブラックファン貧血(DBA)の患者において、これまでに10種類以上のリボソームタンパク質(RP)遺伝子の変異が報告された。これらの変異がなぜ造血系に強い影響を及ぼすのかを解明するために、ゼブラフィッシュのDBAモデル(rps19発現抑制胚)を用いて解析を行った。 1. ポリソーム解析 モルフォリノアンチセンスオリゴによりrps19発現抑制胚を作製し、ショ糖密度勾配遠心法によりポリソーム(複数のリボソームがmRNAを翻訳している状態)を分画し、そこからmRNAを精製した。このmRNAを鋳型にcDNAを合成し、造血に関わる遺伝子(sptb,tubb5,mpo)と、アポトーシスに関わる遺伝子(p53,p21,bax)について半定量的PCRを行った。表現型の解析によって赤血球の減少やアポトーシスの亢進が確認されたことと一致して、sptb、tubb5、mpoの発現は減少し、p53の発現は顕著に増加することが示唆された。 2. 赤血球の成熟度の解析 受精後24、48、72時間のrps19発現抑制胚から血球を採集してギムザ染色後、形態観察により赤血球の成熟度を判定した。正常胚と比較して血球の成熟は遅延し、48時間までにほとんどの血球でアポトーシスの亢進が見られた。合成したmRNAの注入により血球の成熟は回復した。また、rps19とp53遺伝子を同時に抑制しても、血球数の回復は顕著ではなかった。このことから、アポトーシスの亢進が貧血の直接の原因ではないと考えた。 rps19遺伝子の発現量の低下に伴って、ポリソーム画分に含まれる量が変動するmRNAは貧血発症に関与する可能性が高い。それを明らかにするための解析技術を確立することができた。
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