2010 Fiscal Year Annual Research Report
川崎病の冠動脈病変におけるアンギオテンシンIIの役割
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20790750
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
菅沼 栄介 東海大学, 医学部, 助教 (60408010)
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Keywords | 川崎病 / アンギオテシン受容体拮抗薬 / 川崎病モデルマウス |
Research Abstract |
研究の目的:川崎病モデルにおけるARBの冠動脈に与える有益性を明らかにする事で、今後ARBが治療的介入目的で利用しうる合理的な薬剤のひとつとなる可能性を証明すること。 ARBの川崎病モデルマウスにおける効果を検討すべく、4週令の雄のC57/BL6JJマウスの腹腔内にPBSを投与した群(P群・n=10)、LCWE(Lactobacillus casei wall extract)1mgを腹腔内注入した群(L群・n=10)、さらにLCWVE+ARB(ロサルタンR)100mg/Lを投与した群(L+A群)n=15)の3群を作製した。投与後4週の時点で、冠動脈病変の程度(HE染色)、マクロファージの浸潤(CD169染色)を組織学的に比較検討した。HE染色におけるリンパ球浸潤の程度は以下のようなスコアリングにより半定量的な解析を行った(0=リンパ球浸潤なし、1=外膜のみの浸潤、2=外膜+中膜の浸潤、3=血管壁全層への浸潤)。L群(1.86)では、P群(0.75)と比べて冠動脈周囲に著明なリンパ球の浸潤を認めたさらにL+A群では1.17と有意に抑制された。ARBによる炎症抑制効果が示唆された。しかし、マクロファージの浸潤の程度に各群での差はなかった。また冠動脈病変には細胞外器質の破壊亢進が大きく関与しており、INF-γ、TNF-α、IL-6MMPsなどの炎症性サイトカインが知られている。同様に大動脈起始部からRNAを抽出しReal-time PCR法でMMP-2、MMP-9、IL-6mRNAの発現量をみた(各群n=5)。LCWE投与群でのmRNA相対発現量はPBS群と比較して、MMP-2(161%)、MMP-9(164%)、IL-6(177%)すべて高値を示した。4週間のARB投与によりMMP-2(148%)、MMP-9(108%)、IL-6(131%)と発現量の抑制をみた。ARBは川崎病モデルマウスにおける冠動脈病変のMMP-2、MMP-9、IL-6を抑制した結果、冠動脈瘤形成予防に有益である可能性が示唆された。今後治療介入目的で利用しうる合理的な薬剤の一つとなることが期待される。
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