2008 Fiscal Year Annual Research Report
Rett症候群モデル胚性幹(ES)細胞による病態解明と治療法の開発
Project/Area Number |
20790756
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
岡部 恭典 Kurume University, 医学部, 助教 (00446098)
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Keywords | 再生医学 / 遺伝子疾患 / 脳神経疾患 / 胚性幹細胞 |
Research Abstract |
本研究はRett症候群(RTT)の原因遺伝子であるMeCP2(methyl-CpG-binding protein2)遺伝子のノックアウト・胚性幹細胞(RTTモデルES細胞)やノックアウト・マウス(RTTモデルマウス)の表現型解析によって、MeCP2欠損による病態形成機構を解明し、ES細胞による移植再生療法を始めとする治療法開発の研究基盤を確立する事を目的として実施された。今年度の成果としてMeCP2遺伝子を欠損させたRettモデルES細胞の樹立に成功し、さらに間葉系細胞を支持細胞として用いた効率的な神経分化誘導系が確立された。この誘導系によって分化した神経細胞を用い分子生化学的な解析を行ったところ、MeCP2遺伝子を欠損してもES細胞から神経細胞への分化効率には明らかな影響は認められなかった。一方、電気生理学的な解析からは、RettモデルES細胞から得られた神経細胞と対照として用いられたコントロールES細胞から得られた神経細胞とでは活動電位の形状に差異があることが判明した。以上の結果はMeCP2遺伝子は神経細胞への分化段階ではなく、成熟段階に重要な役割を持っていると言う従来の報告に相違せず、RTTの病態の主となる現象は神経細胞の機能の面に起こっていると言う仮説と一致した。以上の事から、この実験系がRTTの病態解析のモデルとして適切である事が確認された。今後、活動電位発生機構に対する作用/阻害薬を用いた条件下における解析を進め、その変化の性状を確定させる。さらに神経細胞の機能を回復させることが出来る条件についての解析も進め、治療へと応用する可能性について追求を行う。また、今回確立された神経分化誘導系からは様々な分化段階の神経幹細胞を得ることが可能である。より純粋でより神経細胞への分化が方向付けられた神経幹細胞を移植に用いることにより期待される、移植再生治療のさらなる効率改善についても検討を行っていく。
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