2009 Fiscal Year Annual Research Report
ダウン症候群精神遅滞の発症におけるDSCAMの役割の検証
Project/Area Number |
20790758
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
天野 賢治 The Institute of Physical and Chemical Research, 神経遺伝研究チーム, リサーチアソシエイト (60333340)
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Keywords | ダウン症候群 / 精神遅滞 / TslCje / DSCAM |
Research Abstract |
精神遅滞や特有な顔貌を主な特徴とするダウン症候群は、ヒト21番染色体トリソミーにより発症する。その発症には21番染色体上遺伝子(或は遺伝子群)の過剰発現が関与していると考えられているが、実際にどの遺伝子が関わっているのかはよくわかっていない。申請者は、ダウン症候群の症状の中で特に精神遅滞に着目し、その発症機序の解明を目指し研究を行っている。本研究課題では、ヒト21番染色体に相同なマウス16番染色体の部分トリソミーであり、且つ精神遅滞様症状を示すダウン症候群モデルマウス(TslCje)を用い、申請者が候補遺伝子の一つと考えているDSCAM(Down syndrome cell adhesion molecule)遺伝子のヘテロマウスと交配し、トリソミー領域内のDSCAMのみを3倍体から2倍体に戻したマウスを作製することにより、精神遅滞様症状が改善されるかどうかを検討した。平成21年度は、学習行動試験及び脳の形態学的な解析を行った。TslCjeマウスは、T迷路学習試験におけるalteration rateが正常マウスに比べて有意に低いことが報告されており、同様な試験であるY迷路学習試験を用いてDSCAM過剰発現の影響を調べた。また、TslCjeマウスにおいて観察された脳室の拡大についても検討を行った。未だ実験途中ではあるが、現在までに得られている結果では、DSCAMを2倍体に戻したマウスにおいて上記パラメーターの大幅な改善は見られていない。このことから、TslCjeマウスで見られる上記表現型への関与は、DSCAM遺伝子単独では殆どないものと考えられる。この結果は、ダウン症候群精神遅滞の発症におけるDSCAMの役割について、動物個体レベルでその関与を検討するものであり、有益な情報となることが期待される。
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