2008 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素性虚血性脳症の治療標的としての酸化損傷タンパク質を探る機能プロテオミクス
Project/Area Number |
20790780
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
古川 絢子 Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center, 病理学部, 研究員 (10455537)
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Keywords | 酸化ストレス / 興奮毒性 / プロテオミクス / 酸化損傷タンパク質 / 神経細胞死 / 低酸素性虚血性脳症 |
Research Abstract |
低酸素性虚血性脳症(HIE : Hypoxic-ischemic encephalopathy)は、神経細胞死によって新生児死亡だけでなく、後障害としての脳性麻痺や発達障害など、発達期脳障害の原因となる。その細胞死のメカニズムとしてグルタミン酸興奮毒性が知られている。興奮毒性による神経細胞死に酸化ストレスが関わることが知られているが、どの時間にどの分子を傷害するかは明らかではない。本年度は興奮毒性試薬であるカイニン酸を投与した実験的HIEモデル動物を用いて、酸化ストレスによるDNAやタンパク質の酸化損傷の時間変化を検討した。HE染色の結果、カイニン酸投与後3時間では、海馬CA1領域の神経細胞において核の形態は保たれているがヘマトキシリンに染まる顆粒が核内に散在する細胞が多く認められた。その後24時間で空胞変性が目立ち、濃縮した核も認められた。72時間後さらには7日後まで核が濃縮した細胞が全層的に認められた。これに対して、酸化損傷を受けたタンパク質(カルボニル化タンパク質)やDNAの酸化損傷の指標である8-OHdGの生成を免疫組織化学的に検討した結果、カイニン酸投与後3時間に海馬CA1領域の神経細胞の核に多く認められた。その後、細胞死を起こした神経細胞にはカルボニル化タンパク質や8-OHdGは認められなかった。このことから、神経細胞死に先立ってDNAやタンパク質の酸化損傷が生じる事が明らかになった。カルボニル化タンパク質に注目した機能プロテオミクス解析の結果、カイニン酸投与3時間後に、酸化損傷がいくつかのタンパク質を標的として特異的に生じた。これらのタンパク質を同定する事で、興奮毒性による神経細胞死における酸化ストレスの役割と、そのメカニズムを解明する事ができる。また、このようにして同定した分子を、HIEの予防・治療の標的分子として提唱する。
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[Journal Article] The Senescence-accelerated Mouse (SAM) : a higher oxidative stress and age-dependent degenerative diseases model.2009
Author(s)
Chiba, Y., Shimada, A., Kumagai, N., Yoshikawa, K., Ishii, S., Furukawa, A., Takei, S., Sakura M., Kawamura, N., Hosokawa, M.
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Journal Title
Neurochem. Res. 34
Pages: 679-687
Peer Reviewed
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