2009 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素性虚血性脳症の治療標的としての酸化損傷タンパク質を探る機能プロテオミクス
Project/Area Number |
20790780
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
古川 絢子 Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center, 病理学部, 研究員 (10455537)
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Keywords | 酸化ストレス / 興奮毒性 / プロテオミクス / 酸化損傷タンパク質 / 神経細胞死 / 低酸素性虚血性脳症 |
Research Abstract |
低酸素性虚血性脳症(HIE : Hypoxic-ischemic encephalopathy)における神経細胞死において、細胞死のメカニズムとしてグルタミン酸興奮毒性が知られている。酸興奮毒性による神経細胞死に酸化ストレスが関与すると報告されているが、詳しい分子機構は明らかではない。昨年度は、酸興奮毒性試薬であるカイニン酸を投与した実験的HIEチデル動物を用いて、投与3時間後に、神経細胞死に先立ってDNAやタンパク質の酸化損傷が生じる事を、免疫組織化学にて明らかにした。本年度は、カイニン酸投与3時間後に酸化傷害を受けるタンパク質を同定した。酸化損傷を受けたタンパク質(カルボニル化タンパク質)を特異的に認識する抗体を用い、2次元電気泳動とウェスタンブロットを組み合わせて検討した。定量解析の結果、カイニン酸投与によってカルボニル化量が2倍以上増加したタンパク質スポットが14個認められた。質量分析装置を用いて、これらのタンパク質スポットの同定を試みた。その結果、熱ショックタンパク質、分子シャペロン、細胞骨格タンパク質などが同定できた。また、蛍光標識2次元ディファレンスゲル電気泳動法によりタンパク質発現変化を定量した結果、コントロールとカイニン酸投与群で2倍以上の発現差を示すスポットは認められなかった。これらの結果から、カイニン酸投与によるカルボニル化タンパク質の増加は、タンパク質発現量の増加ではなく酸化傷害の増加であることが明らかになった。また、タンパク質の酸化損傷が神経細胞死に先立って生じる事から、タンパク質の酸化損傷が興奮毒性に起因する神経細胞死のカスケードの上流に位置する可能性が考えられた。カイニン酸投与3時間後に酸化傷害を受けるタンパク質が、興奮毒性による神経細胞死にどのように関わるのかを解明することで、これらのタンパク質をHIEの予防、治療に応用できる分子として提唱できると考える。
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