2008 Fiscal Year Annual Research Report
酸性糖脂質によって活性化される脂質代謝経路の解析とそのメラノーマ治療戦略への応用
Project/Area Number |
20790796
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山内 祥生 Nagoya University, 大学院・医学系研究科, 助教 (00444878)
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Keywords | メラノーマ / ガングリオシド / コレステロール / Akt |
Research Abstract |
メラノーマは、悪性度の極めて高い皮膚がんの一種である。メラノーマ細胞では特徴的な酸性糖脂質の発現が見られ、特に、ジシアリル糖質脂GD3は原発巣の腫瘍組織やメラノーマ細胞株などに普遍的に発現している。メラノーマ細胞においてGD3はその悪性形質の発現に重要であり、GD3が脂質ラフトで増殖や接着のシグナルを増強していることが示唆されている。しかしながら、GD3依存的な悪性形質発現の分子メカニズムは十分に理解されていない。我々は、脂質ラフトを中心にしたGD3依存的なシグナルの変化とその分子基盤を理解することを目的に、脂質ラフト構造の形成に重要なコレステロールを中心にした脂質代謝についてGD3発現ヒトメラノーマ細胞株とGD3発現欠損メラノーマ細胞株を用いて比較検討を行った。その結果、GD3発現メラノーマ細胞株では、GD3欠損株に比べて有意にコレステロール合成が亢進していた。さらに、コレステロール生合成に関与する酵素遺伝子の転写を制御する転写因子SREBPの活性化も、GD3発現メラノーマ細胞で亢進していた。さらに、SREBPの活性化やコレステロール合成の律速酵素HMG CoA還元酵素の発現亢進が多くのヒトメラノーマ細胞株で確認され、コレステロール合成の亢進がメラノーマ細胞の普遍的な表現型であることが示唆された。また、コレステロール合成阻害剤はメラノーマ細胞の増殖を顕著に抑制し、Akt阻害剤はSREBPの活性化やコレステロール生合成を顕著に抑制した。以上の結果より、メラノーマ細胞では、GD3存在的なAktシグナルが、SREBPを介してコレステロール生合成を制御しており、コレステロール合成がメラノーマ細胞の増殖に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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