2009 Fiscal Year Annual Research Report
気分障害の時間生物学的治療とその作用機序に関する研究
Project/Area Number |
20790828
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
越前屋 勝 Akita University, 医学部, 講師 (60420056)
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Keywords | 臨床 / 気分障害 / 断眠 / 生体リズム / 治療 |
Research Abstract |
うつ病患者に対する断眠療法は、その高い有効性が知られているが、効果が持続しにくいことから、今日までわが国では普及してこなかった。本研究では、大うつ病エピソードの患者に全断眠を施行し、その効果を増強・維持する目的で睡眠位相前進と高照度光療法を併用し、その治療効果を評価した。研究プロトコールは、day0;全断眠、day1;17:00~24:00睡眠+0:00~2:00高照度光療法、day2;19:00~2:00睡眠+2:00~4:00高照度光療法、day3;21:00~4:00睡眠+4:00~6:00高照度光療法(day2~4:睡眠位相前進)、day5~6;23:00~6:00睡眠+6:00~8:00高照度光療法。治療効果は、他覚評価としてHamilton Depressive Rating Scale(HAM-D)、自覚評価としてSelf-Rating Depression Scale(SDS)およびVisual Analog Scale(VAS)、QOLの評価としてSF-36を用いた。評価期間はday20までとした。抗うつ薬は対象患者間で統一せず、研究導入前のものを継続使用した。薬剤抵抗性の大うつ病患者12名(男性7名、女性5名;単極性9名、双極性3名;平均年齢41.5±11.1歳)を研究プロトコールに導入した。全断眠後、HAM-D、SDS、VASにおいて有意な改善が認められた。統計的有意な変化に達したのはいずれの評価尺度においても断眠直後のday1ではなく、睡眠位相前進施行中のday2以後であった。HAM-D得点改善率50%以上をResponse、50%未満への逆戻りをRelapseと定義すると、12名中8名がday6までにResponse、そのうち1名がday13でRelapse、12名中1名がday13でResponseとなった。12名中3名がResponseに至らなかった。最終的(day20)に12名中8名がResponseを維持した。著しい有害事象は認められず治療中断例は0名であった。SF-36では、day-1と比較してday20で「全体的健康感」「活力」「日常役割機能(精神)」の3つの下位尺度において有意な改善が認められた。本研究の治療によって、薬剤抵抗性の大うつ病患者において高い改善率を示したことから、断眠療法は薬剤への反応が乏しい難治性遷延性のうつ病に有効な治療法であると考えられた。睡眠位相前進及び高照度光療法を併用した方法は治療効果を増強・維持するうえで有効であると示唆された。
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Research Products
(5 results)