2008 Fiscal Year Annual Research Report
オキシトシンによる社会性障害の改善の脳基盤解明と、脳画像指標による改善効果の予測
Project/Area Number |
20790831
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山末 英典 The University of Tokyo, 医学部・附属病院, 准教授 (80436493)
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Keywords | 自閉症 / 脳画像 / オキシトシン / 社会性の障害 / 男女差 / functional MRI / 表情認知 / 共感 |
Research Abstract |
急増する当該領域論文を概観し(Yamasue et al. 2009)、仮説とデザインの細部を洗練させ、東京大学医学部附属病院内でオキシトシン噴霧剤を用いた臨床試験として申請し承認を受けた。 男女1名ずつの俳優が演技する、恐怖、悲しみ、喜びの表情を観察する条件と模倣して一緒に演技する条件、そして相当する表情筋の運動のみの条件を含む課題を健常成人34名(男17名/女17名)に用いたfunctional MRIでの予備的検討を行った。その結果、後部下前頭回、後部上側頭溝などの領域は模倣の際に運動よりも有意に強く活動した。まだ観察する際にも模倣と類似した脳活動が多く得られたが、扁桃体、前部島皮質など情動処理に関与する部位は模倣で観察よりも有意に強く活動していた。さらに、女性では男性よりもこれらの扁桃体や前部島皮質などの賦活が有意に強かった。これらの対人知覚や情動に関与する脳領域の賦活によって共感という高次の感情が成立し、こうした脳活動には男女差があると考えられた。"Extreme male brain theory of autism"に即して、男女差のある対人相互性の脳基盤を明らかにするために有効なこの表情模倣課題は、自閉症スペクトラム障害の対人相互性の障害やオキシトシンによる改善効果を検討する上で適していると考え、さらに俳優20名(男10名/女10名)の表情の撮影を追加し、心理課題を改良した。 一方で、成人で高機能の自閉症スペクトラム障害患者の専門外来を立ち上げ、男性だけで40名程度の当事者が定期通院するまでに発展させた。また、国際的に妥当とされる診断面接(Autism Diagnostic Interview revised : ADI-R)の診断トレーニングを渡米して受講した。
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